AI概要
【事案の概要】 被告会社の従業員である被告Eが、てんかんの発作歴を隠して運転免許を更新した上で業務中に小型特殊自動車(ホイールローダー)を運転中、てんかんの発作により意識を喪失し、歩道上にいた11歳の女児Aに衝突してAを死亡させた交通事故について、Aの父(原告B)、母(原告C)及び兄(原告D)が、被告Eに対し民法709条、被告会社に対し民法715条に基づき、損害賠償を求めた事案である。Aは先天性の両側感音性難聴(身体障害者等級3級)があり、聴覚支援学校に通学していた。被告Eは刑事裁判で危険運転致死傷罪等により懲役7年の判決を受けている。 【争点】 主たる争点は、聴覚障害を有する年少者の死亡逸失利益における基礎収入の算定方法である。原告らは、年少女子の逸失利益について全労働者平均賃金を基礎収入とする実務が定着していることや、障害者法制の整備・テクノロジーの発展等を理由に、賃金センサスの全労働者平均賃金497万2000円を基礎収入とすべきと主張した。被告らは、Aの聴力障害が自賠責後遺障害等級4級相当(労働能力喪失率92%)であること等を理由に、聴覚障害者の平均賃金294万円を基礎収入とすべきと主張した。 【判旨】 裁判所は、基礎収入について全労働者平均賃金の85%(422万6200円)とするのが相当と判断した。その理由として、①Aは年齢相応の学力を有し、勉学や他者との関わりに対する意欲と両親の支援が十分にあり、将来様々な就労可能性があったこと、②他方で聴力障害が労働能力を制限し得る事実自体は否定できないこと、③ただし聴覚障害者の大学等進学率の向上傾向、若年層の雇用率の高さ、障害者法制の整備やテクノロジーの発達により聴覚障害者の平均収入は増加すると予測できること、④先天的に聴力障害を有し対応能力を身に付けた者については自賠責の労働能力喪失率92%を参考にできないことを挙げた。生活費控除率は45%、死亡慰謝料は2600万円とし、原告ら固有の慰謝料は父母各200万円、兄100万円を認容した。結論として、原告B及び原告Cに各1829万5704円、原告Dに110万円の連帯支払を命じた。