AI概要
【事案の概要】 亡Dがビジネスホテル(アパホテル大阪肥後橋駅前)の22階客室に宿泊中、客室の窓から外部のバルコニーに出た際に転落して死亡した事故について、亡Dの妻子である原告らが、ホテルのバルコニーに通常有すべき安全性を欠く瑕疵があったとして、ホテル運営会社である被告に対し、主位的に工作物責任(民法717条1項)に基づき、予備的に宿泊契約上の安全配慮義務違反の債務不履行に基づき、合計約1億3162万円の損害賠償を請求した事案である。客室の窓は床から73cmの高さにある腰高窓で、開閉制限器具の安全ピン及びプラスチックカバーが外れており全開可能な状態であった。バルコニーの柵の高さは72cmで、建築基準法施行令126条1項が求める1.1m以上の基準を大幅に下回っていた。 【争点】 ①ホテルの設置又は保存における瑕疵の有無、②宿泊契約上の安全配慮義務違反の有無、③瑕疵と死亡との因果関係、④損害額、⑤過失相殺の有無及び割合。被告は、バルコニーは非常時の一時避難場所として設置されたものであり通常利用が想定されていないから建築基準法施行令126条1項は適用されないと主張した。 【判旨】 裁判所は、建築基準法施行令126条1項は避難施設に関する規定であり、非常時の避難に用いられるバルコニーにも適用されると判断した。非常時の避難の際には切迫した状況と避難者の不安定な心理状態から転落の危険性が高く、同項の趣旨は転落防止と避難者の安全確保にあるとし、大阪市建築確認課の反対の法的見解を排斥した。そして、柵の高さ72cmは同項の基準(1.1m)を相当下回り、代替的な転落防止設備もないことから、本件バルコニーは通常有すべき安全性を欠いており、設置又は保存に瑕疵があると認定した。因果関係についても、柵が基準どおり1.1m以上であれば、亡Dがバランスを崩しても重心が柵の外側に移動せず転落しなかった蓋然性が高いとして肯定した。一方、亡Dが非常時でないにもかかわらず意図的にバルコニーに立ち入りバランスを崩して転落したことについて7割の過失相殺を認め、逸失利益約8666万円、死亡慰謝料2400万円等から過失相殺・損益相殺を行い、原告Aに約889万円、原告B・Cに各約444万円の支払を命じた。