特許権侵害損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用したパーソナルコンピュータシステム」に関する特許権(特許第4555901号)を有する一審原告(株式会社DAPリアライズ)が、一審被告(シャープ株式会社)によるスマートフォン(被告各製品)の製造・販売が本件特許権の侵害に当たるとして、主位的に不法行為に基づく損害賠償として1億円、予備的に不当利得返還請求として同額の支払を求めた事案の控訴審である。本件特許は、携帯情報通信装置において、単一のVRAM(ビデオメモリ)を用いて、内蔵ディスプレイと外部ディスプレイの双方にビットマップデータを出力する技術に関するものである。原審(東京地方裁判所)は、主位的請求について消滅時効の成立を認めて棄却し、予備的請求について不当利得返還請求権に基づき980万1770円及び遅延損害金の限度で認容したため、一審原告・一審被告の双方が敗訴部分を不服として控訴を提起した。 【争点】 本件の主な争点は、(1)被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件充足性)、(2)進歩性欠如による無効理由の有無(乙4公報及び甲11公報を主引用例とするもの)及び訂正の再抗弁の成否、(3)明確性要件・サポート要件違反の有無、(4)不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の成否、(5)不当利得返還義務の有無及び返還すべき利得の額である。特に、控訴審では一審原告が無効審判手続中にした訂正請求(本件訂正2)による訂正の再抗弁が大きな争点となった。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、一審原告・一審被告双方の控訴をいずれも棄却した。まず、「単一のVRAM」の意義について、付属ディスプレイ用とインターフェース手段用の両機能にそれぞれ専用のVRAMがあるのではなく、1つのVRAMが存在し、両機能で共通にビットマップデータの読出しを行うことを意味すると解釈した。次に、訂正の再抗弁について、本件訂正2は訂正要件を満たすと認めた上で、乙4公報及び甲11公報をそれぞれ主引用例とする進歩性欠如の主張に対し、いずれの引用例にも「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を伝達する無線信号を受信して処理する具体的構成の開示・示唆がなく、周知技術を加味しても当業者が容易に想到できたとはいえないとして、訂正により無効理由は解消すると判断した。被告各製品は本件訂正発明の構成要件を充足するとも認定した。他方、不法行為に基づく損害賠償請求権については消滅時効の成立を認め、不当利得返還義務については原審と同額の980万1770円と認定し、原判決を維持した。