特許権侵害損害賠償
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用したパーソナルコンピュータシステム」に関する特許権(特許第4555901号)を有する控訴人(株式会社DAPリアライズ)が、被控訴人(シャープ株式会社)に対し、被控訴人の製造販売する携帯情報通信装置(被告各製品)が本件特許発明の技術的範囲に属するとして、特許法102条3項に基づく損害賠償金4億8000万円の一部である3000万円及び遅延損害金の支払を求めた事案の控訴審である。本件特許発明は、携帯情報通信装置が内蔵ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度の画像データを処理する際に、「単一のVRAM」にビットマップデータを書き込み・読み出しを行う「グラフィックコントローラ」を備えることを構成要件とするものである。原審(東京地裁)は、被告各製品が本件発明の技術的範囲に属しないとして控訴人の請求を棄却し、控訴人がこれを不服として控訴した。 【争点】 主たる争点は、被告各製品が構成要件D及びHにいう「単一のVRAM」を充足するか否かである。控訴人は、VRAMにはラインバッファも含まれるとし、被告各製品の液晶コントローラに内蔵されたDRAM(20ライン分のラインバッファ)が「単一のVRAM」に該当すると主張した。これに対し被控訴人は、本件明細書の記載からVRAMはフレームバッファを意味すると反論した。 【判旨】 知財高裁は、控訴を棄却した。まず、被告各製品において液晶コントローラに内蔵されたDRAMは20ライン分のラインバッファにすぎず、画像全体の書き込み・読み出しを行うものではないから、構成要件D及びHにいう「VRAM」に対してビットマップデータの書き込み・読み出しを行う「グラフィックコントローラ」は存在しないと判断した。次に、仮に当該DRAMがVRAMに該当するとしても、被告各製品にはCPUに接続されたSDRAMも表示データの書き込み・読み出しに用いられており、これもVRAMとして機能しているため、被告各製品には「単一の」VRAMは存在しないと認定した。控訴人がWikipediaの記載(甲34)を根拠にVRAMにはラインバッファも含まれると主張した点についても、同記載にはラインバッファは「RAMの大容量化にともない消えていった」との記述があり、本件特許の優先日にVRAMにラインバッファが当然に含まれると解されていたとはいえないとした。以上から、被告各製品は本件特許発明の技術的範囲に属しないとした原判決の判断は相当であるとして、控訴を棄却した。