仮の差止めの申立て事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 東京都特別区・三鷹市・武蔵野市(本件交通圏)でタクシー事業を営む申立人ら(ロイヤルリムジン・ジャパンプレミアム)が、関東運輸局長による公定幅運賃の変更(令和4年10月11日公示、増収率14.24%)に対し、仮の差止めを求めた事案である。本件交通圏は準特定地域に指定されており、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(特措法)に基づく公定幅運賃制度が適用されている。申立人らは、変更後の公定幅運賃を下回る運賃を届け出たところ、関東運輸局から運賃を公定幅運賃内に変更するよう指導を受けた。申立人らは、このまま公定幅運賃内の運賃を届け出なければ、運賃変更命令、使用停止処分、事業許可取消処分等の不利益処分を受けるおそれがあるとして、本案訴訟(不利益処分差止請求)を提起するとともに、仮の差止めを申し立てた。 【争点】 ①適法な本案訴訟の提起があるか(処分の蓋然性、重大な損害のおそれ等)、②償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるか、③本案について理由があるとみえるか(公定幅運賃変更に係る裁量権の逸脱・濫用の有無)、④公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるか。 【判旨】 裁判所は、運賃変更命令及び事業許可取消処分について仮の差止めを認容し、使用停止処分及び事業停止処分に係る申立ては却下した。まず処分の蓋然性について、申立人らが公定幅運賃を下回る運賃を届け出て指導を受けている以上、運賃変更命令及びこれに続く事業許可取消処分がされる蓋然性があると認めた。次に緊急の必要性について、運賃変更命令に違反すれば刑事罰(100万円以下の罰金)の対象となり、社会的信用の毀損等により事業基盤に回復困難な損害が生じるとして、運賃変更命令及び事業許可取消処分については償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があると判断した。他方、使用停止処分については車両の一部が短期間使用できなくなるにとどまり、金銭賠償で回復可能として緊急の必要性を否定した。本案の理由については、本件変更時にタクシーの供給がむしろ不足している状況にあったにもかかわらず、変更後の公定幅運賃の下限が旧上限を相当程度超える大幅な引上げとなっており、過度の運賃競争を引き起こすおそれ等に関する考慮が不十分であったとして、下限運賃の指定に裁量権の逸脱・濫用があると一応認めた。公共の福祉への影響についても、仮の差止めの効果は当事者間に限られるとして否定し、本案事件の第一審判決言渡しの日から60日を経過するまでの間、運賃変更命令及び事業許可取消処分の仮の差止めを認容した。