発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(動画の著作権を有する株式会社)は、氏名不詳者ら(本件各発信者)がP2P形式のファイル共有ソフトウェアであるBitTorrentを使用して、原告が著作権を有する動画2本を送信可能化したことにより、送信可能化権を侵害されたと主張した。原告は、インターネットサービスプロバイダであるKDDI株式会社(被告)に対し、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、発信者の氏名・住所・電子メールアドレス等の情報の開示を求めた。 原告は、調査会社(株式会社utsuwa)に著作権侵害調査を依頼し、同社がBitTorrentのクライアントソフトであるμtorrentを用いて調査を行った結果、令和4年7月11日及び同月12日に、被告から割り当てられたIPアドレスを使用して、本件各動画のファイルをダウンロード及びアップロードしていたユーザーの存在が確認された。 【争点】 本件の争点は、権利侵害の明白性であり、具体的には本件調査の信用性が争われた。被告は、①調査会社がIPアドレスの特定に係る専門技術を有するか不明であること、②市販ソフトウェアを用いたIPアドレスの変更が可能であるためIPアドレスが偽装された可能性を排除できないことを主張し、調査の信用性を争った。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を全部認容した。まず、BitTorrentの仕組みとして、ファイルをダウンロードしたユーザーは自動的にシーダーとなり、他のユーザーからの求めに応じてファイルの一部(ピース)をアップロードする状態に置かれること、またリーチャーであってもダウンロード完了前から既に所持するピースをアップロード可能な状態にあることを認定した。 その上で、調査会社がμtorrentを使用して本件各発信者のIPアドレスとアップロード状況を確認した調査結果に基づき、本件各発信者が本件各動画に係る原告の送信可能化権を侵害したと認定した。 被告の主張については、調査会社の専門技術の有無やIPアドレス偽装の可能性といった抽象的な事情・可能性の指摘にとどまるものであり、原告がIPアドレス・品番・日付等が現に表示されたスクリーンショットを状況証拠として提出していることも踏まえれば、調査の信用性を覆すに足りないと判断した。また、原告には損害賠償請求を予定していることから発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとして、開示請求を認容した。