不開示決定処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告が、情報公開法に基づき、厚生労働大臣及び文部科学大臣に対し、新型コロナウイルス感染症対策として全世帯等に配布された布製マスク(いわゆるアベノマスク)の購入契約に係る単価金額・数量等の開示を請求したところ、両大臣からいずれも一部不開示決定を受けたため、(1)厚生労働大臣による不開示部分の取消し及び開示決定の義務付け、(2)文部科学大臣による不開示部分の取消し及び開示決定の義務付けを求めるとともに、(3)厚生労働大臣が開示決定等の延長後の期限を約2か月にわたり徒過したことが国家賠償法上違法であるとして慰謝料等60万円の支払を求めた事案である。布製マスク配布事業は、令和2年3月以降、介護施設等向け・妊婦向け・全戸向け・学校向けの各事業として実施され、厚生労働省が民間企業6社と、文部科学省が同3社とそれぞれ購入契約を締結した。被告は、単価金額等を開示すれば企業の競争上の地位を害するおそれがある(情報公開法5条2号イ)、また国の財産上の利益を不当に害するおそれがある(同条6号ロ)として不開示の正当性を主張した。 【争点】 (1)本件不開示情報の情報公開法5条2号イ(法人の正当な利益を害するおそれ)該当性、(2)同条6号ロ(国の財産上の利益等を不当に害するおそれ)該当性、(3)開示決定等の遅延の国家賠償法上の違法性、(4)損害の有無及び額。 【判旨】 裁判所は、争点(1)について、単価金額等を公にしても企業の営業ノウハウやアイデアが明らかになるとはいえず、布製マスクの調達能力の一部が判明するにとどまるとした。また、既に一部企業が単価を自ら公表し、国会質疑でも具体的単価が言及され、会計検査院も平均単価を公表していることから、競争上の地位を害する蓋然性は認められないと判断した。争点(2)について、将来同様の事態が生じた際に売値がつり上げられるおそれは抽象的かつ確率的な可能性にとどまり、むしろ単価金額の事後的開示の方が企業の自制を促し不当な価格高騰を防ぎ得るとした。さらに、政府自身も契約上秘密保持条項を設けておらず、文部科学省の決裁文書の機密性格付けも最低の「1」であったことを指摘し、税金の使途に係る行政の説明責任の観点から開示の要請が高いとして、5条2号イ及び6号ロのいずれにも該当しないと結論づけた。他方、争点(3)については、担当部署である経済課がコロナ対応で極めて繁忙であり、職員の超過勤務が過労死ラインを超える水準にあったこと等を考慮し、約2か月の遅延は社会通念上受忍限度を超えるものとはいえないとして、国家賠償法上の違法性を否定した。以上により、不開示部分の取消し及び開示決定の義務付け請求を認容し、国家賠償請求は棄却した。