AI概要
【事案の概要】 宮古島市議会議員であった原告が、被告(産経新聞社)の運営するウェブサイトに平成29年3月22日付けで公開された記事により名誉を毀損されたとして、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料200万円及び弁護士費用20万円)と記事の削除を求めた事案である。 原告は平成29年1月の補欠選挙で宮古島市議に当選した人物で、自衛隊の宮古島配備に反対する立場からSNSに投稿した記事が問題視され、市議会で辞職勧告決議が可決される事態となっていた。被告の記者は、住民からの情報提供を契機に取材を行い、「自衛隊差別発言のA・宮古島市議、当選後に月収制限超える県営団地に入居」との見出しで記事を公開した。記事は、原告世帯が県営住宅の月収制限(月額15万8000円)を大幅に上回る月約31万円の所得を得ているにもかかわらず、当選前の平成27年度の所得を基準に入居が認められたことを指摘する内容であった。原告は記事公開直後に抗議文を送付したが、被告から回答はなく、令和2年9月に本件訴訟を提起した。 【争点】 主な争点は、①本件記事により原告の社会的評価が低下したか、②摘示事実の真実性、③真実相当性(真実と信じたことに相当の理由があったか)、④損害額、⑤消滅時効の成否、⑥記事削除の可否であった。被告は、記事は原告の条例違反を指摘するものではなく問題提起にすぎないと主張し、また記事の内容は真実であり、仮に真実でなくとも複数の関係機関への取材に基づき真実と信じた相当の理由があると主張した。 【判旨】 裁判所は、本件記事が原告の社会的評価を低下させるものと認定した。記事は、公人である原告が県営住宅に係る定めに反する行為をしていると一般読者に理解される内容であった。 真実性については、原告世帯には未就学児がおり、適用される月収制限は15万8000円ではなく裁量世帯の基準である21万4000円であったところ、申込時の政令月収は1万7466円にすぎず、平成29年分の所得で試算しても政令月収は19万1168円で基準内であったことから、月収制限を超えているとの摘示事実は真実ではないと判断した。 真実相当性についても、記者は原告世帯に適用される基準が15万8000円と21万4000円のいずれであるかを確認しておらず、基本的な取材事項の取材を欠いた不十分なものであったと認定した。さらに、取材先の担当者らも原告の収入が確定していないため断定的な指摘はしておらず、記事公開当時は議員選挙や辞職勧告決議により原告が1年間議員報酬を得られるか不確定であったにもかかわらず、見通しに安易に依拠したとして、真実相当性の抗弁も排斥した。 損害については、記事公開から訴訟提起まで3年以上が経過していたため、公開後6か月分の損害に係る請求権は消滅時効が完成したと判断した上で、慰謝料10万円及び弁護士費用1万円の合計11万円の支払いと記事の削除を命じた。