動産引渡等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、動産執行事件において物資搬送装置一式(本件動産)を買い受けた上告人に対し、被上告人(債務者)が、本件動産の売却は無効であるなどと主張して、所有権に基づき本件動産の引渡し等を求めた事案である。 上告人は、被上告人が上告人所有の土地を不法占有しているとして土地明渡し等を求める訴えを提起し、被上告人に対し土地明渡し及び月額約52万円の遅延損害金の支払等を命ずる判決が確定した。上告人は、同判決を債務名義として被上告人所有の本件動産を差し押さえた。その後、上告人は、請求債権の額が変更になることを知らせる目的で「債権額変更上申書」を執行官に提出した。この上申書には、被上告人から遅延損害金の一部について入金があり未払額が約93万円となる旨が記載されていた。執行官は、競り売り期日に上告人に対し本件動産を100万円で売却した。 原審は、上記上申書が民事執行法39条1項8号の弁済受領文書に該当し、その提出から4週間は手続を停止すべきであったのにこの間に売却がされたことは重大かつ明白な瑕疵であるとして、本件売却は当然に無効であると判断し、被上告人の引渡請求を一部認容した。 【争点】 弁済受領文書の提出による強制執行の停止期間中にされた執行処分(動産の売却)が当然に無効となるか。 【判旨】 破棄自判(被上告人の控訴を棄却)。 最高裁は、民事執行法が執行処分に対する不服申立ての制度として執行抗告及び執行異議の各手続を設けている趣旨に照らし、執行処分が執行手続に関する法令の規定に違反してされたものであっても、原則として上記各手続により取り消され得るにとどまり、当然に無効となるものではないとした。そのうえで、弁済受領文書の提出による強制執行の停止制度は、弁済をした債務者が請求異議の訴えを提起し強制執行の停止等を命ずる裁判を得るまでの時間を確保するため、簡便な方法により短期間に限って強制執行を停止して債務者の便宜を図る趣旨であると解した。このような趣旨に照らせば、執行処分が弁済受領文書の提出による強制執行の停止期間中にされたものであっても、その瑕疵は当然に無効となるほど重大なものではないと判断した。不動産強制競売における売却実施終了後の弁済受領文書提出について原則として手続を停止しないとする規定(法72条3項)や、動産執行において一定の場合に差押物を売却できるとする規定(法137条1項)も、この結論を裏付けるものであるとした。 なお、上告人が提出した上申書は、請求債権の額の変更を知らせる目的で提出されたものであり、そもそも弁済受領文書の提出があったとみることはできないとも付言した。裁判官全員一致の意見である。