AI概要
【事案の概要】 本件は、C大学アイススケート部の監督であった原告(プロのフィギュアスケーター)が、同部のコーチであった被告から無視や陰口等のハラスメント行為を受けて精神的苦痛を被ったと主張して、被告に対し不法行為に基づく慰謝料等合計1100万円の支払を求めた本訴と、被告が、原告のブログ記事、週刊誌のインタビュー記事及び記者会見における発言が被告の名誉を毀損するものであると主張して、原告に対し慰謝料等合計330万円の支払を求めた反訴からなる事案である。原告は平成29年4月に部の監督に就任したが、練習時間帯の変更提案や部則改定等を巡り被告との間で意見の相違が生じ、令和元年9月に監督を辞任した。原告は辞任後、自身のブログや週刊誌インタビュー、記者会見において、被告からハラスメント行為を受けたことを公表した。 【争点】 ①被告による原告に対するハラスメント行為の有無(本訴関係)、②原告の各表現行為(ブログ記事、取材発言、記者会見発言)が被告に対する名誉毀損行為に当たるか(反訴関係)、③名誉毀損についての違法性阻却事由の有無(反訴関係)、④各損害額。 【判旨】 裁判所は、原告の本訴請求を棄却し、被告の反訴請求を220万円(慰謝料200万円・弁護士費用20万円)の限度で認容した。 ハラスメント行為の有無について、裁判所は、原告が主張する無視、睨みつけ、陰口等の各行為は、原告が元来有する被告への印象や主観的な受け止めに左右されるおそれがあること、原告自身が練習方法の問題は円満に解決したと供述していること、被告がハラスメント行為を行う事情が見当たらないこと、原告の供述を裏付ける客観的資料が存在しないこと、及びC大学のハラスメント調査委員会もハラスメント行為を認定できないと結論付けたことを総合し、社会通念上許容される限度を超える違法なハラスメント行為があったとは認められないと判断した。 名誉毀損行為の有無について、裁判所は、原告のブログ記事、週刊誌での取材発言及び記者会見での発言は、いずれも一般読者の普通の注意と読み方を基準として、被告が原告に対しハラスメント行為や嫌がらせを行ったという事実を摘示するものであり、被告の社会的評価を低下させるものであるから名誉毀損に当たると認定した。違法性阻却事由については、ハラスメント行為の存在が認められない以上、真実性の抗弁は成り立たず、客観的裏付けを欠く以上、真実相当性の抗弁も認められないとした。