AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和4年6月から8月にかけて、東京都千代田区内の官公庁や政党本部に相次いで不法侵入した建造物侵入・窃盗の事案である。被告人はまず、令和4年6月上旬頃、警視庁丸の内庁舎に正面出入口の自動扉から侵入し、庁舎内に置かれていた警察官用の腕章2個を窃取した。被告人は、それ以前から同庁舎に何度も侵入を繰り返しており、その際にまとめて置いてある腕章の存在に気付き、欲しくなって窃取に及んだものであった。次に、約2か月後の同年8月24日、被告人は予め入手していた偽の議員バッジを着用して衆議院議員になりすまし、自由民主党本部に東側正面出入口から侵入した。同日午後には、同じく衆議院議員を装って外務省に正面玄関から侵入した。さらに翌25日にも、同様の手口で中央合同庁舎第5号館(厚生労働省)に東ゲートから侵入した。いずれの犯行も計画的かつ常習的なものであり、偽名を名乗る準備こそしていなかったものの、偽の議員バッジを用いて国会議員になりすますという大胆かつ巧妙な手口であった。被告人の動機は、庁舎内を見てみたい、自由民主党本部の空気感を味わいたい、偉い人になったような気分を味わいたいというものであった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人の刑事責任は重いと判断した。第1の警視庁庁舎への侵入は常習的犯行の一環であり、手口も大胆で手馴れていると指摘した。窃盗の被害品である腕章は廃棄予定のものであったとはいえ、警察官が使用する真正な腕章であり、悪用のおそれがあることから、被告人に悪用の意図がなかったとしても結果を軽視できないとした。第2ないし第4の各侵入についても、計画的かつ常習的犯行の一環であり、手口は大胆かつ巧妙であると評価した。弁護人が指摘する、偽名を予め用意していなかったことや容易に侵入できたこと等の事情は、上記評価を左右しないとした。動機についても、庁舎内を見たい、偉い人の気分を味わいたいなどというものは安易かつ幼稚であり、酌むべき点はないと断じた。他方、被告人が事実関係を全て認めて反省していること、未だ若く前科がないこと、母親が社会復帰後に同居して監督する旨証言していることなどの事情を考慮し、直ちに服役させることは相当でないと判断した。以上を踏まえ、被告人を懲役2年6月(求刑同)に処した上で、4年間の執行猶予を付し、社会内で立ち直る機会を与えることとした。