発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、映像の制作・販売等を目的とする原告(株式会社WILL)が、P2Pファイル共有ソフト「ビットトレント」を通じて、原告が著作権を有する動画(本件動画)の複製物が不特定の利用者により送信可能化されたとして、経由プロバイダである被告(KDDI株式会社)に対し、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、著作権(公衆送信権)侵害に係る発信者情報(氏名、住所、電子メールアドレス)の開示を求めた事案である。 原告の委託を受けた調査会社2社は、トラッカーサーバーから本件動画ファイルの提供者とされるピアのIPアドレスを取得し、各ピアに接続して応答確認(ハンドシェイク)を行ったが、ファイル自体は受信していなかった。なお、調査会社はいずれもプロバイダ責任制限法発信者情報開示関係ガイドラインにおける認定調査会社ではなかった。 【争点】 1. 本件各通信による情報の流通によって原告の著作権が侵害されたことが明らかといえるか(調査の信用性、ハンドシェイクのみで送信可能化が認められるか)。 2. 本件各情報が原告の権利の侵害に係る発信者情報であるか。 3. 原告に本件各情報の開示を受けるべき正当な理由があるか(被告は、本件動画がわいせつ物に該当し頒布が違法であるため損害が生じないと主張)。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも認容した。 争点1・2について、調査会社の担当者の陳述によれば、トラッカーサーバーから取得したリストに基づき各ピアに接続し応答確認を行ったこと、対象となる通信を行った者のファイル保持率が100%及び90%であったことが認められ、調査結果の正確性・信用性を疑わせる事情は特にうかがわれないとした。また、ビットトレントではリーチャーであってもファイルの少なくとも5%程度をダウンロードすれば他のピアに直接送信する状態にあったとの調査結果を踏まえ、ファイル保持率90%のピアについても他のピアに直接送信できないことをうかがわせる証拠はないとした。したがって、本件各通信を行った各ピアは、本件ファイルのデータの100%又は90%を自己の端末に保存し、他のピアに対して直接送信できる状態にしていたと認められ、原告の公衆送信権を侵害したことが明らかであると判断した。 争点3について、本件動画は成人向けに販売されているものであるが、刑法175条1項所定の「わいせつな物」に該当しその頒布が違法であって原告に損害が生じないとの事情があるとまでは認めるに足りないとして、被告のわいせつ物の抗弁を排斥し、原告には発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると認めた。