AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(愛知製鋼株式会社)が、被告(マグネデザイン株式会社)が特許権者である「超高感度マイクロ磁気センサ」に関する特許(特許第5839527号)について、明確性要件違反、サポート要件違反及び実施可能要件違反を理由として特許無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、その取消しを求めた審決取消訴訟である。本件特許は、超高速スピン回転効果(GSR効果)を基礎とした磁気センサに関するもので、磁性ワイヤに0.5GHz〜4.0GHzのパルス電流を印加し、表面磁区内のスピンの超高速一斉回転現象によるコイル出力電圧と外部磁界の正弦関数関係(関係式(1))を利用して磁界を測定する発明である。原告は、本件発明が基礎とするGSR現象は従来技術であるMIセンサのMI現象と区別できないことを前提に、各記載要件違反を主張した。 【争点】 (1) サポート要件違反の有無(取消事由1):GSR現象とMI現象の区別可能性、発現条件「表皮深さp<表面磁区の厚みd」が請求項に記載されていないこと、数値限定の技術的意義等 (2) 実施可能要件違反の有無(取消事由2):GSR現象による磁化変化のみをコイル出力として取り出す手段の開示の有無、パルス磁界アニーリングの意味内容等 (3) 明確性要件違反の有無(取消事由3):請求項1における「異方性磁界」の明確性 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。取消事由1(サポート要件違反)について、本件発明のGSR現象は、①表面磁区を有する磁性ワイヤの使用、②GHzオーダーのパルス周波数、③異方性磁界の1.5倍以上の円周方向磁界の発生、④超高速スピン回転現象による磁化変化のコイル出力検知という4つの事項が一体となった技術的思想であり、従来のMIセンサがこれら全てを備えるとは認められないとした。発現条件「表皮深さp<表面磁区の厚みd」については、パルス周波数や電流強度に関する請求項の記載がこの条件を確保する事項に該当すると判断した。取消事由2(実施可能要件違反)について、表皮効果により電流密度は表面から指数関数的に減衰するため、「表皮深さp<表面磁区の厚みd」とした場合の90度磁壁移動の影響は無視できるレベルであり、当業者は過度な試行錯誤なく実施可能と判断した。取消事由3(明確性要件違反)について、「異方性磁界」は確立した技術用語であり、第三者に不測の不利益を被らせるほど不明確とはいえないとした。