特許料請求事件、損害賠償等請求反訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和3ワ26762
- 事件名
- 特許料請求事件、損害賠償等請求反訴事件
- 裁判所
- 東京地方裁判所
- 裁判年月日
- 2023年3月7日
- 裁判官
- 10、國分隆、15
AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「地盤安定化薬液用硬化剤および地盤安定化薬液」とする特許(特許第6350985号)の特許権者である原告が、被告三菱ケミカル及びその子会社である被告インフラテックによる地盤安定化薬液用硬化剤(「GS硬化剤」)の製造販売が本件特許権を侵害するとして、被告らに対し連帯して約2億2517万円の損害賠償を求めた本訴事件と、被告らが、原告による本訴提起は不当訴訟であるとして弁護士費用相当額の損害賠償を求めるとともに、被告三菱ケミカルが本件特許は原告の冒認出願によるものとして特許法74条1項に基づく移転登録手続を求めた反訴事件である。原告は、かつて日東化学工業(後に三菱レイヨンに承継、さらに被告三菱ケミカルに商号変更)に勤務し研究部長を務めていた者で、退職後の平成26年に本件特許を出願・登録した。被告らは、GS硬化剤は原告の部下であったBi及びCiが平成3年に完成させた発明(本件硬化剤発明)と同一であり、本件特許は冒認出願であると主張した。 【争点】 (1) GS硬化剤の製造販売以外の態様による本件特許発明の実施の有無、(2) GS硬化剤が本件特許発明3の技術的範囲に属するか、(3) 本件特許は冒認出願として無効か(特許法123条1項6号)、(4) 被告インフラテックの先使用権の有無、(5) 本訴提起による不法行為の成否。 【判旨】 裁判所は、本訴・反訴いずれの請求も棄却した。まず、本件特許権の設定登録日以降にGS硬化剤を製造販売していたのは菱晃及び被告インフラテックであり、被告三菱ケミカルは実施していないとして、被告三菱ケミカルに対する請求を退けた。次に、GS硬化剤は硬化剤であって珪酸アルカリ水溶液を含有する地盤安定化薬液そのものではないから、本件特許発明3の技術的範囲には属しないとした。冒認出願の主張については、本件特許発明と本件硬化剤発明を構成要件ごとに対比し、アルカリ性物質の種類(構成要件B2・G)及び消泡剤の含有量範囲(構成要件D)において相違があり、両発明は同一とはいえないとした。そして、Bi及びCiがこれらの相違点に係る構成を着想・具体化したと認める証拠はなく、原告が退職後に公知の技術事項を組み合わせて本件特許発明を完成させた可能性も否定できないとして、冒認出願とは認められないとした。他方、被告インフラテックについては、GS硬化剤は本件硬化剤発明の実施品であり、日東化学から事業承継した菱晃が本件特許出願時に実施事業を行っていたことから、先使用による通常実施権(特許法79条)を認め、原告の請求を棄却した。反訴の不当訴訟の主張についても、原告の主張が事実的・法律的根拠を欠くことを知りながら提訴したとは認められず、著しく相当性を欠くとはいえないとして棄却した。