AI概要
【事案の概要】 本件は、「朔北カレー」の文字を横書きしてなる商標(本願商標)について、商標登録出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした特許庁の審決の取消しを求める訴訟である。原告は、第29類(レトルトパウチされた調理済みカレー、カレーのもと等)を指定商品として本願商標の登録出願をしたが、特許庁は、先行登録商標である「サクホク」(引用商標、商標権者はカルビー株式会社)と類似するとして、商標法4条1項11号に該当するとの審決をした。審決は、本願商標の構成中「朔北」は特定の意味合いを想起させない造語であり、指定商品との関係で識別力の弱い「カレー」部分と分離観察が可能であるとした上で、要部「朔北」と引用商標「サクホク」は称呼が同一であり類似すると判断した。 【争点】 本願商標「朔北カレー」が、引用商標「サクホク」と類似し、商標法4条1項11号に該当するか否か。具体的には、(1)「朔北」が造語か既存の意味を有する語か、(2)本願商標を「朔北」と「カレー」に分離観察することの当否、(3)本願要部「朔北」と引用商標「サクホク」の外観・称呼・観念の総合的類否が争われた。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、審決を取り消した。まず、「朔北」について、広辞苑第七版をはじめ多数の国語辞典・漢和辞典に「北。北方。北方の地」等の語義で掲載されている熟語であり、著名なゲーム(ファイナルファンタジーXI)のイベントクエスト名や小説の題名にも用いられていること、構成漢字の「朔」も萩原朔太郎や八朔で親しまれた文字であることから、「朔北」は「北の方角」又は「北方の地」を表す単語として理解されるのが相当であり、造語とはいえないと認定した。次に、「カレー」部分は指定商品との関係で出所識別標識としての称呼・観念を生じないから、分離観察自体は許されるとした。その上で、本願要部「朔北」と引用商標「サクホク」を比較すると、称呼は同一であるものの、外観は漢字2文字と片仮名4文字で明らかに異なり、観念も「朔北」からは「北の方角」「北方の地」の観念が生じるのに対し「サクホク」は造語で特定の観念を生じないから明らかに異なると判断した。そして、需要者・取引者が「朔北」から引用商標「サクホク」やその権利者を想起するような取引の実情はなく、称呼による識別性が外観及び観念による識別性を上回るとはいえないから、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとはいえず、本願商標は引用商標に類似しないと結論づけた。