発信者情報開示請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和4ネ10100
- 事件名
- 発信者情報開示請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2023年3月9日
- 裁判官
- 本多知成、浅井憲、中島朋宏
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、バーチャルYouTuberタレントのキャラクター(兎田ぺこら)の権利を保有する控訴人が、氏名不詳者がツイッター上で投稿したツイートにより、控訴人のイラスト及び動画に係る著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことが明らかであると主張し、経由プロバイダである被控訴人(ソフトバンク)に対し、改正前プロバイダ責任制限法4条1項に基づき発信者情報の開示を求めた事案である。問題のツイートは、控訴人キャラクターの動画を切り抜いた画像に、両目の下に涙の絵柄、顔の周りに首つり用の縄の絵柄、「死ぬ」「ぺこ」の文字を付したコラージュ画像を含むものであった。原審(東京地裁)は控訴人の請求を棄却したため、控訴人が控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)本件ツイートの投稿により控訴人の著作権が侵害されたことが明らかか、(2)侵害情報の投稿時とは異なるログイン時のIPアドレスから把握される発信者情報が「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか、(3)ログインを媒介したにすぎない被控訴人が「開示関係役務提供者」に該当するか、(4)メールアドレスを含む発信者情報の開示を受ける正当な理由があるかである。 【判旨】 知財高裁は原判決を取り消し、控訴人の請求を全部認容した。まず著作権侵害について、控訴人イラストはウサギを擬人化した特徴的なデザインであり著作物に該当するとし、本件画像はキャラクターが自殺しようとしている様子を描くもので、二次創作の利用規約が定める「名誉ないし品位を傷つける行為」に該当するため、利用許諾の範囲外であると判断した。被控訴人の「自殺は不名誉なものと解されてはならない」との主張は退けられた。次に、法4条1項の「当該権利の侵害に係る発信者情報」の範囲について、投稿時のログインに係るIPアドレスに限定すると被害者救済が図れない場合が生じ法の趣旨に反するとし、当該侵害情報を送信した者の発信者情報であると認められる限り、投稿後や投稿前のログインに係るIPアドレスから把握される発信者情報も含まれると判示した。本件では、アカウントのプロフィールや投稿内容から1名の個人による管理と推認され、本件IPアドレスが約3か月間で147回と最多のログイン回数を記録していたこと等から、投稿の約5日半後のログインに係る発信者情報も「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当するとした。また、被控訴人がログインを媒介したにすぎないプロバイダであっても「開示関係役務提供者」に該当するとし、メールアドレスについても交渉のための正当な開示理由があると認めた。