特許取消決定取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(大日本印刷株式会社)は、バイオマス由来のエチレングリコールを用いたポリエステルを含む樹脂組成物からなる層を有する積層体に関する特許(特許第6547817号、請求項14項)を有していたところ、特許異議の申立てがされ、特許庁は令和4年3月22日付けで全請求項に係る特許を取り消す決定(本件取消決定)をした。本件取消決定の理由は、(1)原告がした訂正請求(除くクレーム形式による特許請求の範囲の減縮等)が訂正要件を満たさないこと、(2)本件発明は引用発明(ガスバリア性積層フィルムを用いた包装用積層材に関する公知文献記載の発明)及び引用文献記載事項に基づき当業者が容易に発明できたものであること、の2点であった。原告はこれを不服として本件取消決定の取消しを求めた。 【争点】 主な争点は、(1)訂正要件に関する判断の誤り(取消事由1)、(2)引用発明に基づく進歩性判断の誤り(取消事由2)、(3)手続違背(取消事由3)である。特に取消事由1では、原告が訂正事項2ないし9において「但し、該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるものを除く」という除くクレーム形式の訂正を行ったことが、特許法120条の5第2項ただし書1号の「特許請求の範囲の減縮」に該当するか、また新規事項の追加に当たるかが争われた。被告(特許庁長官)は、当該訂正は積層体の外部の構成を特定するものにすぎず積層体自体の範囲を減縮していないと主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、取消事由1に理由があると判断し、本件取消決定を取り消した。まず訂正の目的について、本件発明の積層体は「少なくとも2層を有する積層体」というオープンクレームであり、第1の層・第2の層以外の任意の層を含み得るものであるから、無機酸化物の蒸着膜やガスバリア性塗布膜も積層体の構成要素となり得ると認定した。したがって、除くクレームにより当該構成を有する積層体を除外することは、訂正前の権利範囲を狭めるものであり、特許請求の範囲の減縮に該当することは明らかであるとした。被告が積層体の内外を形式的に区別して減縮に当たらないと主張した点については、オープンクレームである以上、積層体の内外を形式的に区別しても意味がないと退けた。新規事項の追加についても、除外により残った技術的事項には訂正前と比較して新しい技術的要素はなく、新規事項を追加するものではないと判断した。本件訂正を認めなかった本件取消決定には誤りがあり、訂正後の請求項15ないし22に係る発明の特許成立の可否が確定していないため、その他の取消事由について判断するまでもなく本件取消決定を取り消すとした。