保護責任者遺棄致死、詐欺、窃盗
判決データ
- 事件番号
- 令和4う284
- 事件名
- 保護責任者遺棄致死、詐欺、窃盗
- 裁判所
- 福岡高等裁判所
- 裁判年月日
- 2023年3月9日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 市川太志、髙橋明宏、関洋太
AI概要
【事案の概要】 本件は、いわゆる「ママ友」関係にあった被告人が、Aに対し数年間にわたって虚言を重ね、Aの収入のほぼ全てを詐取するとともに、Aの夫や親族との関係を断たせて孤立させ、食事を含む生活全般を実質的に支配していた中で発生した事案である。被告人は、Aに対し、「ボス」と呼称する架空の人物がAの夫の浮気調査費用を立て替えている、夫に対する慰謝料請求裁判に勝つためには質素な生活をし子供らを厳しくしつけている様子を裁判所に見せなければならない、ボスが監視カメラを設置しているなどの虚言を重ねた。その結果、Aは被告人を信じ切り、令和元年8月頃から子供らの食事の量及び回数を減らし、「罰」と称して数日間食事を一切与えないこともあった。被告人は、Aと共謀の上、当時5歳のAの三男(被害者)に十分な食事を与えず、令和2年4月18日、被害者を飢餓死させた(保護責任者遺棄致死)。また、被告人は令和元年6月から令和2年6月までの間に、14回にわたりAから現金合計約174万円及び預金通帳を詐取し(詐欺)、同通帳を使用してATMから合計約25万円を引き出した(窃盗)。原審は被告人を懲役15年に処した。 【争点】 弁護人は、(1)A証言の信用性(被告人の虚言は荒唐無稽で信じるに値せず、Aが信じたとする証言は信用できない)、(2)被告人によるAの支配の有無(被告人は被害者を病院に連れて行くよう「保護」を指示しており、支配していたとはいえない)、(3)量刑不当(保護責任者であるAが懲役5年であるのに、その3倍の懲役15年は重過ぎる)を争った。 【判旨(量刑)】 控訴棄却。裁判所は、A証言の信用性について、被告人とAとの間のSNSのやり取りには、数年間にわたってボスの存在や裁判の追行等を前提とした被告人からのメッセージが多数存在し、Aが録音した被告人との電話でも同様のやり取りがなされていること、Aの夫や母の証言とも符合していることから、A証言の核心部分は客観的証拠により強く裏付けられていると認定した。虚言が荒唐無稽との主張に対しては、ママ友間の陰口という信じやすい事柄を皮切りに数年間にわたり虚言を重ね、親族と疎遠にさせて生活を依存させていった経過に照らせば、被告人の虚言を信じたとするA証言は不自然ではないとした。被告人が「病院に行かないといけない」と送信した点についても、一連のやり取りの流れに照らせば被告人のAに対する影響力を前提としこれを強めるものであり、保護の指示や判断の委任とは評価できないとした。量刑については、被害者に長期間飢えの苦しみを与え飢餓死に至らしめた残酷な態様、被告人が巧妙かつ悪質な手口で不保護を主導した点、同種事案の中でも極めて重い部類に属する点を指摘し、被告人に対する責任非難と被告人の強い心理的影響下に置かれていたAに対する責任非難には大きな差があるとして、懲役15年の原判決の量刑は不当とはいえないと判断した。