損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 福島第一原子力発電所事故当時、福島県南相馬市鹿島区を生活の本拠地としていた住民ら(原告ら)が、東京電力(被告東電)及び国(被告国)に対し、本件事故により放射性物質による被ばくの不安、人口流出入によるコミュニティの変容、農業・趣味・生きがいの喪失、社会基盤の回復遅延による不便な日常生活等の複合的・継続的な被害(地域社会生活変容被害)を受けたと主張して、被告東電に対しては原賠法3条1項等に基づき、被告国に対しては国賠法1条1項等に基づき、連帯して1人あたり慰謝料600万円及び弁護士費用60万円の合計660万円等の支払を求めた集団訴訟である。鹿島区は本件発電所から30km圏外に位置し、国の避難指示の対象とはならなかったが、南相馬市長が平成23年3月16日に全市民に市外への避難を促し、約38日間にわたり一時避難が要請された。 【争点】 (1) 被告国の規制権限不行使の違法性(地震による原子炉破損の防止義務、津波対策としての規制権限行使義務、事故後の避難指示・情報提供義務等)、(2) 被告東電の民法709条に基づく不法行為責任の成否、(3) 損害額(日常生活阻害慰謝料の相当性、地域社会生活変容被害の賠償の要否)、(4) 被告東電の弁済の抗弁。 【判旨】 被告国の責任について、裁判所は、地震による原子炉破損についてはこれを認めるに足りる証拠がないとし、津波対策に関する規制権限不行使についても、本件長期評価の知見に基づく本件試算津波は敷地東側前面では敷地高を超えず、主要建屋付近の浸水深も限定的であり、本件試算津波に対する防護措置を講じていたとしても本件事故を回避できたとは認められないとして、国の責任を否定した。事故後の避難指示義務違反・情報提供義務違反についても違法性を認めなかった。被告東電の責任については、原賠法3条1項に基づく無過失責任を認めたが、原賠法は原子力損害について一般不法行為責任の適用を排除していると解し、民法709条に基づく責任は否定した。損害については、避難の有無を問わず鹿島区住民の日常生活阻害による精神的損害を原子力損害と認めたうえで、被告東電の自主賠償基準(月額10万円×7か月=70万円)は相当な額であると認定した。さらに、個々の原告について、放射線の作用により身近で非代替的な環境が変化し平穏な日常生活が阻害されたと認められる場合には慰謝料を10万円増額するのが相当とした。原告らの被告東電に対する請求は一部認容、被告国に対する請求は全部棄却された。