AI概要
【事案の概要】 原告は、手すきの和紙に刷毛等で模様や色彩を施した「染描紙」を制作・販売する者である。被告Bは著名な日本画家であり、羽田空港のターミナルビルを管理する被告ビルデング及び被告ターミナルから「空」と「雲」を表現したアートワーク作品の制作を依頼された。被告Bは原告の店舗で染描紙を複数枚購入し、これをスキャナで読み込んで拡大・色調調整等の加工を施した上で、羽田空港第1旅客ターミナルビルに展示する屏風様の「天空図屏風」シリーズ(展示物15〜20)及び第3旅客ターミナルビルに展示する「往く雲」シリーズ(展示物1〜14)を制作した。各展示物には被告Bの氏名のみが著作者として表示され、原告の氏名は表示されなかった。原告は、被告Bに対し著作権(複製権・翻案権)侵害及び著作者人格権(氏名表示権)侵害に基づく損害賠償等を、被告ビルデング及び被告ターミナルに対し展示差止め・廃棄等をそれぞれ求めた(第1事件〜第3事件)。 【争点】 主な争点は、(1)染描紙が原告の著作物に当たるか、(2)各展示物が染描紙の複製又は翻案に当たるか、(3)原告が染描紙の利用を黙示に許諾していたか又は著作権が消尽したか、(4)氏名表示権侵害の有無である。 【判旨】 請求をいずれも棄却した。裁判所は、展示物1〜14については、制作に使用された染描紙の模様等を直接明らかにする証拠がなく、被告Bがスキャナ読み込み後にデータに調整を施しているため、元の染描紙の模様等を認定できないとして、複製又は翻案に当たるとは認められないとした。展示物15〜20に使用された染描紙15〜20については、原告が一点一点制作し、模様の配置等の全体的構成において実用目的の特徴と分離した美的特性を備えるとして著作物性を肯定した。しかし、原告は店舗に「無断転用、模倣、複写による商業行為」を禁じる注意書きを掲示していたものの、染描紙を加工して利用することについては相当に広い範囲で包括的かつ黙示に許諾していたと認定した。被告Bの行為は染描紙をそのまま複写して販売等するものではなく、大きな加工を施した上での利用であり、原告の黙示の許諾の範囲内であるとした。氏名表示権侵害についても、利用の黙示の許諾の性質上、氏名を表示しないことも包括的かつ黙示に許諾していたと認め、違法とはならないと判断した。