損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 将棋に関するウェブサイト「A」を運営する控訴人が、被控訴人(NHK)が令和3年5月30日に放送したテレビ番組「将棋フォーカス」内の「初心者必見!対局マナー」というコーナーにおいて、控訴人のウェブサイトに掲載された将棋の対局マナーに関する文章(原告文章)と類似したナレーション及び字幕を、控訴人の許諾を得ず、また出典を示すこともなく放送したとして、損害賠償を求めた事案である。原審では人格権侵害に基づく請求が棄却されたため控訴人が控訴し、控訴審において著作者人格権(氏名表示権)侵害に基づく請求に交換的変更するとともに、著作権(公衆送信権)侵害に基づく請求を追加した。放送後、被控訴人は番組サイトに謝罪文を掲載し、原告ウェブサイト名を明記する等の対応をしたが、控訴人が求めたリンク掲載には応じず、交渉は決裂した。 【争点】 1. 原告文章の著作物性並びに著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)の侵害の有無 2. 損害の発生の有無及びその数額 【判旨】 裁判所は、原告文章のうち5つの文章を個別に検討した。原告文章1(座る場所)、3(王将・玉将の使用順序)、4(持ち駒の並べ方)については、記載内容は将棋のルール又はマナーであり、表現もありふれたものとして著作物性を否定した。一方、原告文章2の「「雑用は喜んで!」とばかりに下位者が手を出さないようにしましょう。」という部分については、駒の準備・片付けは上位者が行うという将棋独自のマナーに関し、一般社会で目下の者が雑用を率先して行う心構えを示す表現をあえて用いた上で逆説的に説明するという特徴的な言い回しに控訴人の個性が現れているとして、創作性を認めた。また原告文章5の「着手した後に「あっ、間違えた!」「ちょっと待てよ・・・」などと思っても、勝手に駒を戻してはいけません。」という部分についても、感嘆符等を用いて将棋を指す者の感情を生き生きと印象深く表現している点に創作性を認めた。被控訴人はこれらの創作性ある部分をほぼそのまま使用しており、公衆送信権及び氏名表示権の侵害を認定した。損害額については、全国放送であること、公共放送事業者による悪質な態様であること等を考慮しつつ、放送後の謝罪対応による一定の回復も斟酌し、氏名表示権侵害の慰謝料5万円、公衆送信権侵害の財産的損害500円、弁護士相談費用等5000円の合計5万5500円を認容した。