特許分割出願却下処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、特許出願の分割出願が却下された処分の取消しを求める行政訴訟である。原告は、令和元年10月29日に「ギフト資産管理システム」に関する特許出願(本件親出願)を行い、令和2年7月7日に特許査定謄本の送達を受けた。原告は同月20日に特許料を納付し、同月29日に特許権の設定登録がされた。その後、原告は同年8月5日に本件親出願をもとの出願とする分割出願を行ったが、特許庁長官は、特許権の設定登録により本件親出願が特許庁に係属しなくなったことを理由に、令和3年3月30日付けで本件分割出願を却下する処分をした。原告は審査請求を経て本件訴訟を提起した。なお、原告が本件設定登録の事実を知ったのは特許証を受領した同年8月17日であり、分割出願時点では設定登録がされたことを了知していなかった。 【争点】 特許法44条1項2号所定の期間(特許査定謄本送達日から30日以内)であっても、特許権の設定登録後に分割出願をすることができるか。具体的には、(1)設定登録後は分割出願ができないとする解釈に法的根拠があるか(取消事由1)、(2)仮にそのような解釈が許容されるとしても、特許出願人との関係では特許証の受領日をもって分割出願不可の効力発生時期とすべきか(取消事由2)が争われた。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。まず取消事由1について、特許法44条1項柱書きの「特許出願人」及び「特許出願」の文言は、特許庁に係属している特許出願及びその出願人を意味することが文理上明らかであるとし、特許査定謄本送達から30日以内であっても、特許権の設定登録がされれば特許出願は特許庁に係属しなくなるため、分割出願はできないと判断した。原告が援用する実用新案法46条の2第1項は実用新案制度に特有の事情を考慮した規定であり、分割出願の時期的要件の解釈に結びつくものではないとした。次に取消事由2について、「特許権は、設定の登録により発生する」(同法66条1項)と規定されており、特許出願人との関係でのみ特許証の受領日に効力が発生すると解する規定は存在しないこと、特許権は対世効を有するため出願人との関係でのみ効力発生時期を別異に解することは法的安定性を欠くこと、特許証は特許権の設定を公証するにすぎないことから、原告の主張を排斥した。他国の立法例との調和についても、それをもって原告主張の解釈を採用すべきことにはならないとした。