発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、動画の著作権を有する原告が、氏名不詳の発信者(本件発信者)がP2P形式のファイル共有ソフトウェアであるBitTorrentを使用して、原告の動画(本件動画)を送信可能化したことにより、原告の送信可能化権を侵害したと主張して、インターネット接続サービスを提供する被告(ソフトバンク株式会社)に対し、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、発信者の氏名・住所・電子メールアドレス等の情報の開示を求めた事案である。 原告は、調査会社(株式会社utsuwa)に依頼し、BitTorrentのクライアントソフトであるμtorrentを用いて調査を実施した。その結果、令和4年6月11日に被告から特定のIPアドレスの割当てを受けた本件発信者が、本件動画に係るファイルのダウンロード及びアップロードを行っていたことが確認された。 【争点】 本件の争点は、権利侵害の明白性、具体的には本件調査の信用性である。被告は、(1)調査ソフトに表示されたIPアドレスが実際の接続端末のものと一致することを確認する試験が行われていない、(2)調査時刻において本件発信者の「上り速度」「下り速度」の表示がなく送信を停止していた、(3)本件発信者のファイル保有率がわずか5.8%と低くアップロードは不可能である、(4)P2P型ファイル交換ソフトによる権利侵害情報検出システムの技術的認定要件(乙1)の基準を満たしていない、などと主張し、調査の信用性を争った。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を認容し、被告に対して発信者情報の開示を命じた。 まず、BitTorrentの仕組みとして、ユーザーはファイルのピースをダウンロードすると同時にアップロード可能な状態に置かれることを認定した上で、本件調査会社がμtorrentを利用して本件発信者から実際にファイルのピースをダウンロードしていた事実を認定し、本件発信者が送信可能化権を侵害したと判断した。 被告の主張に対しては、(1)μtorrent上で「上り速度」「下り速度」の表示がない場合でもダウンロードが行われていることが証拠上認められる、(2)BitTorrentではファイル保有率が低い場合でもピースのアップロードが行われる、(3)本件発信者のフラグにかかわらず調査会社が実際に本件発信者からファイルをダウンロードしている、として、いずれも排斥した。また、調査時刻やIPアドレスの正確性についても証拠上認められるとした。 以上から、権利侵害の明白性を認め、原告には損害賠償請求を予定していることから発信者情報開示を受けるべき正当な理由があるとして、請求を全部認容した。