AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(新聞社記者兼風俗業従事者)が、フリーライターである被告と共同で書籍「大阪ミナミの貧困女子」を出版するにあたり、被告が原告の執筆した原稿を無断で改変したことにより、当初のコンセプトとは異なる不本意な内容の書籍が出版されたとして、被告に対し、著作者人格権(同一性保持権)侵害、名誉毀損及び自己決定権侵害を理由に、民法709条に基づく損害賠償金300万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 原告は、大阪ミナミにおいてキャバクラ嬢等を対象とする労働相談所の運営に関与しており、被告からミナミの現状等を伝える本の出版を提案され、原稿を執筆した。原告は初稿に加筆修正が加えられた校正稿(初校)の内容に不満を持ち、執筆者名の変更や本企画からの離脱を申し出たが、被告から損害賠償請求の可能性を指摘され、最終的にはLINEグループ上で再校に対する複数の修正要望を伝えた後、「私も終了です。」とのメッセージを送信した。なお、原告は先行して本件出版社を被告とする関連訴訟を提起したが、請求はいずれも棄却されている。 【争点】 1. 初稿を改変したのは被告であるか 2. 原告は初稿を原告執筆部分のとおり改変することに同意をしたか 3. 原告の同意は錯誤により取り消されたか 4. 被告の虚偽記載(男性である被告が女性ライター名で執筆した点)により原告の社会的評価が低下したか 5. 被告の強要行為により原告の自己決定権が侵害されたか 【判旨】 請求棄却。裁判所は、事案に鑑み争点2から判断した。 争点2について、原告は当初は初校の内容に不満を持ち執筆者名変更等の申出をしていたが、その後、内容が改善されれば執筆者名として自身の氏名を用いることを了承し、再校の内容を十分に確認した上で複数回修正要望を出した後に「私も終了です。」とのメッセージを送信したのであるから、原告執筆部分の内容で原稿を確定することに同意したものと認めた。原告は最終原稿が別途送付されるものと考えていたと主張したが、被告が直ちに「全員合意ですね」「発売は2週間後です」と述べたのに原告が異議を述べず、その後も本件書籍の送付先住所を伝え、見本刷りの到着を報告するなど出版に応じた言動を示していたことから、原告の主張を排斥した。 争点3について、原告の同意に至る経過に照らし、錯誤に基づくものとは認められないとした。 争点4について、本件書籍は原告執筆部分とその他の執筆者の部分が明確に区別されており、一般読者が他の執筆者の部分を原告が執筆したと誤認するとは認められず、原告の社会的評価の低下はないとした。 争点5について、被告メッセージは厳しい論調ではあるものの、それ自体原告の意に反して本企画の続行を強制させる内容ではなく、原告はその後も自らの修正意見を積極的かつ明確に伝えるなど合理的に行動していたことから、強要により自己決定権が侵害されたとは認められないとした。