四国電力伊方原発3号炉運転差止仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和3ラ172
- 事件名
- 四国電力伊方原発3号炉運転差止仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件
- 裁判所
- 広島高等裁判所
- 裁判年月日
- 2023年3月24日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 脇由紀、梅本幸作、佐々木清一
- 原審裁判所
- 広島地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 四国電力が設置・運転する伊方原子力発電所3号炉について、広島市等に居住する住民らが、同原子炉施設は特に地震に対する安全性を欠いており、運転中に重大事故が発生して大量の放射性物質が放出される具体的危険があるとして、人格権に基づく妨害予防請求権を被保全権利として、運転差止めの仮処分命令を申し立てた事案である。原審(広島地裁)が被保全権利の存在及び保全の必要性のいずれも疎明されていないとして申立てを却下したため、住民らが即時抗告した。住民らは、基準地震動650ガルが過去の地震観測記録と比較して著しく低水準であること、南海トラフ地震の想定地震動を181ガルと設定したことの不合理性、新規制基準自体の不合理性、武力攻撃時の原発の危険性等を主張した。 【争点】 主な争点は、①司法審査の在り方(疎明責任の分配)、②本件原子炉施設の地震等に対する安全性(新規制基準の合理性及びその適用の合理性)である。争点①では、伊方最高裁判決の判断枠組みを本件仮処分事件にも適用し、電力会社側に安全性の疎明責任を転換すべきかが争われた。争点②では、基準地震動650ガルの水準、南海トラフ地震の想定地震動181ガルの妥当性、強震動予測に基づく基準地震動策定手法の合理性、過去に基準地震動を超過した事例の評価、戦時における原発の危険性等が争われた。 【判旨】 広島高裁は、抗告をいずれも棄却した。まず司法審査の枠組みについて、本件は人格権に基づく民事保全事件であり、具体的危険性の疎明責任は原則として住民側が負うとした。伊方最高裁判決の判断枠組みを直ちに本件に持ち込んで電力会社に疎明責任を転換することは相当でないとし、仮に同判決を参考にするとしても、電力会社は新規制基準への適合性について申請内容等を具体的に主張・疎明すれば足り、住民側が規制委員会の審査基準や判断過程の不合理性を疎明すべきであるとした。基準地震動の水準については、特定の地点における地震動は震源特性・伝播特性・増幅特性といった地域特性の影響を強く受けるため、地域特性の異なる各地点の観測記録と単純に比較して低水準であるとはいえないとした。過去の超過事例についても、旧耐震指針下の基準地震動を超えた事例であって現行の基準地震動Ssを超えたものではないか、地震発生様式が異なるものであるとして、本件基準地震動の不合理性を裏付けるものとはいえないと判断した。181ガル問題についても同様に地域特性の補正なく比較することは不合理であるとした。武力攻撃の危険については、事態対処法・国民保護法による対処体制が整備されており、現時点で武力攻撃を受ける蓋然性は認められないとして、住民側の主張をいずれも退けた。