発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 映像の企画・制作等を目的とする原告(株式会社ケイ・エム・プロデュース)が、原告の著作権を有するアダルトビデオ7作品について、ビットトレント(P2Pファイル共有ソフト)を通じて複製物を送信可能化した複数の者がそれぞれ原告の公衆送信権を侵害したとして、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、被告(KDDI株式会社)に対して発信者情報の開示を求めた事案である。原告は、調査会社(株式会社HDR)が独自に開発した著作権侵害検知ソフトウェアを用いてビットトレントネットワーク上のピアのIPアドレス等を記録し、これに基づいて162件の発信者情報の開示を請求した。 【争点】 主要な争点は、(1)原告が本件各動画の著作権を有するか、(2)本件各通信の発信者の情報が公衆送信権の侵害に係る発信者情報に当たるか(調査ソフトウェアの正確性)、(3)原告に発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか(動画のわいせつ性と損害の有無)の3点であった。特に争点(2)では、被告が発信者に意見照会を実施したところ、162件中少なくとも88件に該当する30人から身に覚えがない旨の回答があり、調査ソフトの正確性が大きく争われた。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、争点(2)について、調査ソフトが正確に動作することの立証が不十分であると判断した。裁判所は、発信者への意見照会の結果、ビットトレントを利用したことがない、端末にインストールした形跡がないなど、当該行為をしていないことに関する内容が相当に説得的な回答が多数あったことを指摘し、調査ソフトを現実のビットトレントネットワークに接続して動作させた際に誤った情報が記録されたことがあったことを相当程度うかがわせる事情があると認定した。原告が提出した動作試験の報告書についても、短時間・少数台での実験にすぎず、実際の様々な動作環境において多数回にわたり検証されたものではないとして、誤記録の可能性を排除するものとはいえないと判断した。以上から、本件調査結果に基づく通信情報の全てが原告主張の通信についての情報であると認めることはできず、著作権侵害の事実を認定できないとして、原告の請求を全て棄却した。