業務上過失致死傷被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、プレジャーモーターボート(船舶の長さ約10.77m)の船長として、令和2年9月6日午前10時58分頃、福島県会津若松市の猪苗代湖西部に位置する丙浜湾内を時速約15ないし20kmで航行中、針路前方の湖上でザップボードの順番待ちのためにライフジャケットを着用して浮かんでいた8歳の男児、35歳の女性及び8歳の男児の3名に気付かないまま、船舶後部のプロペラを接触させた。この事故により、8歳の男児1名が脳損傷及び上半身と下半身の離断を含む多発外傷により死亡し、35歳の女性が加療約237日間を要する両下腿不全切断等の重傷を、もう1名の8歳の男児が加療約142日間を要する両下腿挫創等の重傷をそれぞれ負った。業務上過失致死傷として起訴された事案である。 【争点】 被告人の過失の有無が争点となった。弁護人は、被害者らが遊泳禁止区域である船舶航行区域付近で浮かんでおり、人が浮いていることの予見可能性がなく、また前方左右の見張りを適切に行っていたが被害者らの発見は困難であったとして、無罪を主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人に過失を認め、禁錮2年の実刑判決を言い渡した(求刑禁錮3年6月)。予見可能性については、事故現場が陸地に近い湾内で水上バイクやトーイングボートが複数航行しており、落水者の存在が想定される水域であったこと、被告人自身も同湾内を多数回航行した経験があったことから、湖上に浮かぶ人の存在を具体的に予見できたと認定した。結果回避可能性については、実況見分で被告人自身が約223m離れた地点からマネキンの頭や肩を視認できたこと、停泊中に同乗者が撮影した画像・動画にも被害者らと推認される浮遊物が写っていたこと、同じ水域を航行した別の船舶の船長が約141m前方から被害者らを視認して衝突を回避できたことなどから、適切な見張りを行っていれば被害者らを発見し事故を回避できたと判断した。量刑においては、見張りという船舶航行上最も基本的な注意義務に違反したこと、8歳の児童が上半身と下半身を離断されて死亡するという極めて重大な結果が生じたこと、被害者側との示談が一部を除き未成立で被害弁償もなされていないことなどを重視し、前科前歴がないことや報道による社会的制裁等の被告人に有利な事情を考慮しても実刑が相当と判断した。