特許取消決定取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(エア・ウォーター防災株式会社)は、「ガス系消火設備」に関する特許(特許第6674704号)の特許権者である。本件特許は、複数のガス貯蔵容器の容器弁の開弁時期をずらしてピーク圧力の重なりを防止することで、ダクトや配管を細くし施工コストの低下と設計の自由度向上を実現するガス系消火設備に関するものである。特許異議申立てを受けた特許庁は、本件発明は甲1(不活性ガス消火設備の基準書)に記載された発明、甲2(国際公開公報)に記載された技術的事項及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたとして、請求項1に係る特許を取り消す決定をした。原告はこの取消決定の取消しを求めて知的財産高等裁判所に出訴した。 【争点】 主な争点は、本件発明と甲1発明との相違点1(複数の容器弁の開弁時期をずらしてピーク圧力の重なりを防止する制御部を備える構成)の容易想到性の判断の当否である。具体的には、甲2に記載されたラプチャーディスク(破裂板)による順次放出の技術思想から、容器弁の開弁時期を制御部でずらすという本件発明の構成に容易に想到できるかが争われた。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を認容し、特許取消決定のうち請求項1に係る部分を取り消した。その理由は以下のとおりである。甲2に記載されたラプチャーディスクは、配管内部の所定圧力で破裂する使い捨ての部材であり、繰り返し開閉する容器弁とは動作及び機能が異なる。甲2の技術的思想はラプチャーディスクの使用を前提としたものであり、ラプチャーディスクを使用せずに各容器弁の開弁時期をずらして順次ガスを放出し過剰圧力を防止することについて記載も示唆もない。したがって、甲2技術的事項から「ラプチャーディスクを用いることなく複数のシリンダーからのガス供給開始時点をずらすという技術思想」を読み取ることはできず、当業者が容器弁の開弁時期をずらす本件発明の構成に容易に想到できたとは認められない。また、甲7及び甲8から容器弁の開弁時期をずらすことが周知技術であったとしても、甲1発明にこれを適用する動機付けを認めるに足りる証拠や論理付けがないとした。以上から、相違点1の容易想到性の判断に誤りがあり、その余の相違点について判断するまでもなく、本件発明の進歩性は否定されないと結論づけた。