AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「プログラム、対戦ゲームサーバ及びその制御方法」とする特許出願(本願)に関する審決取消訴訟である。原告は、対戦ゲームにおいてユーザの強さに基づいて適切な対戦相手を選択する仕組みに関する発明について特許出願をしたが、拒絶査定を受けて不服審判を請求した。審判手続において原告は2度にわたり手続補正を行い、第2次補正では、当初明細書等の段落【0004】及び【0005】を削除するとともに、特許請求の範囲における「強さ」を「数値が高い程対戦ゲームを有利に進めることが可能な所定のパラメータである強さ」と補正した。特許庁は、第2次補正が新規事項の追加に当たるとしてこれを却下した上で、第1次補正発明についても新規事項追加、サポート要件違反及び明確性要件違反を理由に本願を拒絶すべきとする審決をした。原告は、審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に提訴した。 【争点】 第2次補正において「強さ」を「攻撃力及び防御力の合計値」に限定せず、「数値が高い程対戦ゲームを有利に進めることが可能な所定のパラメータ」と補正したことが、当初明細書等に記載した事項の範囲内の補正といえるか(特許法17条の2第3項の新規事項追加の有無)。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を認容し、審決を取り消した。まず、補正が新規事項を追加するか否かの判断においては、当初明細書等の記載に基づいて技術的事項を明らかにする必要があるから、第2次補正で削除された段落に基づいて発明の課題を認定した審決の手法自体には誤りがないとした。しかし、発明の技術的意義は、ユーザの強さの段階を基準として所定範囲内の強さの対戦相手を抽出し、対戦相手間の強さに大差が生じることを防ぐ点にあるところ、ゲーム分野において「ユーザの強さ」に攻撃力及び防御力以外に体力、俊敏さ、所持アイテム数等が含まれることは出願時の技術常識であり、当事者間にも争いがないと認定した。その上で、当初明細書等記載の「強さ」とはゲームにおけるユーザの強さを表す指標であってゲームの勝敗に影響を与えるパラメータであれば足りると解するのが相当であり、「強さ」を「攻撃力と防御力の合計値」とすることは発明の一実施形態にすぎず、技術常識上含まれる要素をあえて除外する理由は見出せないと判断した。したがって、第2次補正は新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載した事項の範囲内でされたものであるとして、補正却下の誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであるから、審決を取り消した。