AI概要
【事案の概要】 本件は、「防眩フィルム」に関する特許(特許第6721794号、請求項1〜4)について、特許庁が特許異議申立てに基づき特許取消決定をしたことから、特許権者である原告(株式会社ダイセル)がその取消しを求めた事案である。本件特許は、ディスプレイ表面への外光の映り込みを防止する防眩フィルムに関するもので、ヘイズ値、内部ヘイズ値及びディスプレイの輝度分布の標準偏差という三つの光学的特性(光学三特性)により発明を特定している。特許庁は、進歩性欠如(特許法29条2項)、実施可能要件違反(同法36条4項1号)、サポート要件違反(同法36条6項1号)及び明確性要件違反(同法36条6項2号)の四つの理由により特許を取り消す決定をした。 【争点】 (1) 進歩性の判断の誤りの有無(引用発明との相違点の認定及び容易想到性の判断) (2) 実施可能要件の判断の誤りの有無(長細状凸部ループ構造以外の構造による実施可能性) (3) サポート要件の判断の誤りの有無(光学三特性による課題解決の認識可能性) (4) 明確性要件の判断の誤りの有無(輝度分布の標準偏差の測定条件の明確性) 【判旨】 裁判所は、四つの取消事由すべてに理由があるとして、特許取消決定を取り消した。進歩性については、引用例2は表面ヘイズ値と切り離してギラツキを調整することを示唆するものではなく、全体のヘイズ値が60%の引用発明に引用例2を組み合わせても、内部ヘイズ値を20%より小さい値とすることは当業者が容易に想到できないと判断した。実施可能要件については、第1実施形態の防眩層には長細状凸部ループ構造以外の凹凸構造も含まれており、当業者が過度の試行錯誤なく光学三特性を満たす防眩フィルムを製造できると認定した。サポート要件については、光学三特性を有する発明が課題を解決できることを当業者が認識できるとした。明確性要件については、当業者であれば測定結果に変動が生じないよう測定条件を設定するものと推認され、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確とはいえないと判断した。