損害賠償請求行使請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 愛知県の住民である原告らが、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」に関し、地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟を提起した事案である。原告らは、同企画展において昭和天皇の肖像写真を燃やす映像作品やいわゆる従軍慰安婦像等の作品が展示されたことにより、芸術祭の安全かつ円滑な運営に支障が生じ、文化庁の補助金が約1167万円減額されたとして、芸術監督である補助参加人及び県のトリエンナーレ推進室長に対する損害賠償請求を県に代位して求めた(請求①)。また、県知事が独断で企画展を再開させたことにより過剰な警備経費約1861万円の支出を余儀なくされたとして、県知事に対する損害賠償請求を県に代位して求めた(請求②)。 【争点】 主な争点は、①あいちトリエンナーレ実行委員会と県の法人格の実質的同一性の有無、②県と実行委員会との間の準委任契約の成否、③芸術監督及び推進室長の共同不法行為の成否、④補助金減額による県の損害の有無、⑤県知事の不法行為の成否、⑥過剰負担経費に係る県の損害の有無である。原告らは、実行委員会と県は実質的に同一の法主体であり、実行委員会の損害は県の損害に当たると主張した。これに対し被告側は、実行委員会は権利能力なき社団として独立した法人格を有し、補助金減額分は戻入により回収済みで県に損害はないと反論した。 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも棄却した。まず、実行委員会について、県のみならず名古屋市等複数の構成員から成り、委員24名中県関係者は5名にとどまり、県以外の収入源も存在すること等から、権利能力なき社団としての実体を備えており、県との法人格の実質的同一性は認められないと判断した。準委任契約の成否についても、実行委員会が継続的に活動し県以外の負担金負担者も存在すること等から、成立は認められないとした。請求①に関しては、補助金減額に伴い実行委員会から県へ約1167万円の戻入がなされた事実を認定し、この戻入は補助金の額に応じて負担金の額を変更することが当初から予定されていた停止条件付き贈与契約に基づく返還債務の履行であり、双方代理の問題も生じず有効であるとして、県に損害は発生していないと結論づけた。請求②に関しても、過剰負担経費を負担したのは実行委員会であり、実行委員会の2019年度収支は約1466万円の黒字であることから、県が当該経費を負担するおそれはなく、県の損害は認められないとした。