AI概要
【事案の概要】 被告東芝の株主である原告らが、被告東芝が提出した有価証券報告書及び四半期報告書(第170期〜第176期第3四半期)に重要な事項について虚偽の記載があったことにより損害を被ったと主張し、被告東芝に対し金融商品取引法21条の2等に基づき、また有価証券報告書等提出時の役員であった被告役員ら(歴代社長3名及び財務担当役員2名)に対し金商法24条の4等に基づき、損害賠償を求めた事案である。被告東芝は、工事進行基準案件における工事原価総額の過少見積り、映像事業における損益調整、半導体事業における在庫評価、パソコン事業における部品取引等において不適切な会計処理を行い、平成20年度から平成26年度まで総額2248億円の税引前利益の過年度決算修正が必要となった。第三者委員会の調査報告書が提出され、金融庁から課徴金約73億円の納付命令を受け、特設注意市場銘柄にも指定された。 【争点】 主な争点は、①有価証券報告書等の「重要な事項についての虚偽記載」の有無及び範囲、②被告東芝の金商法21条の2・民法709条等の責任の有無、③被告役員らの責任の有無、④原告らの損害及び相当因果関係の有無である。特に、虚偽記載の立証として有価証券報告書等の訂正があったことのみで足りるか、一般に公正妥当と認められる企業会計基準への違反を具体的に主張立証する必要があるかが争われた。 【判旨】 裁判所は、虚偽記載とは一般に公正妥当と認められる企業会計基準を逸脱することをいうと解し、原告らが第三者委員会報告書の引用等にとどまり具体的な会計基準違反の主張立証をしていないと判断した。もっとも、被告東芝が第171期・第173期・第174期の当期純損益について虚偽記載を争わない部分については「権利自白」として拘束力を認め、被告東芝に金商法21条の2の責任を肯定した。一方、民法709条・715条・会社法350条の責任は、具体的な注意義務違反の主張がないとして否定した。被告役員らについては、虚偽記載の存在自体を認める主張がなく、原告らの立証も不十分として全面的に責任を否定した。損害については、取得自体損害及び信用毀損・ろうばい売りによる株価下落は相当因果関係を否定し、高値取得損害のみを認定した。株価下落220.5円のうち市場要因60%・信用毀損等20%を控除し、高値取得分は下落分の20%と認定した上、取得時期に応じた影響度(30〜100%)を乗じ、民訴法248条により相当な損害額を算定した。結論として、被告東芝のみに対する一部認容判決となり、被告役員らに対する請求は全て棄却された。