建物解体撤去等差止請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 北海道が、老朽化により平成26年7月以降立入禁止としていた北海道百年記念塔(野幌森林公園内の鉄塔)について、平成30年12月に解体撤去を決定し、令和4年3月に北海道議会が解体撤去費の一部を含む予算を可決承認した。北海道は工事請負業者との間で工事代金額5億7420万円の請負契約を締結し、令和4年11月頃から解体工事に着手した。これに対し、北海道の住民である原告らが、百年記念塔は北海道の歴史的文化的価値や住民の郷土愛を象徴する代替不能な存在であるとして、行政事件訴訟法37条の4に基づき、百年記念塔の解体撤去及びそのための費用支出の差止めを求めた事案である。本案前の争点として、解体撤去等の処分性及び原告らの原告適格が争われた。 【争点】 百年記念塔の解体撤去及びそのための費用の支出に、抗告訴訟の対象となる処分性(行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」)が認められるか。原告らは、百年記念塔の解体撤去は住民の利用権や文化的・精神的価値を永久に喪失させる公権力の行使であると主張した。被告は、解体撤去は私法上の請負契約に基づく事実行為にすぎず、第三者の権利義務に変動をもたらすものではないと反論した。 【判旨】 裁判所は、訴えをいずれも却下した。処分性について、「公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」をいうとの判例法理(最判昭和39年10月29日)を引用した上で、百年記念塔の解体撤去は、被告が所有する行政財産の処分(廃棄)として工事請負業者が請負契約に基づき実施する事実行為にすぎず、費用の支出も支出負担行為や支出行為という事実行為にすぎないとした。これらの行為自体が住民に何らかの行動を義務付けたり法律上の権利義務を形成したりするものとは認められず、そのような法律効果を根拠付ける法令上の規定も見当たらないとして、処分性を否定した。原告らが主張する百年記念塔の利用等の利益や文化的歴史的価値の喪失についても、不特定多数者に対する一般的抽象的な事実上の影響にすぎず、住民の権利義務を直接に形成するものとはいえないと判断した。なお、訴訟係属中に死亡した原告Aについては、訴訟上の地位が一身専属的であるとして訴訟終了を宣言した。