発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、釣具の企画・販売会社の代表取締役である原告が、YouTube上で釣具の使い分け方や釣りの技法について約20分間にわたり口頭で解説した動画(本件原動画)を投稿していたところ、氏名不詳者がその動画の一部を抜き出して別の動画(本件投稿動画)を作成し、YouTubeに投稿したことについて、原告の著作権(複製権)が侵害されたと主張して、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、YouTubeを運営する被告(Google LLC)に対し、本件投稿動画を投稿したアカウントの氏名・電話番号・メールアドレス等の発信者情報の開示を求めた事案である。原告は、アマチュア向けのハウツー動画として、自身の釣りの経験を踏まえ、風や潮の流れの具体的な状況を例に挙げながら釣具の効果的な使い方を平易な言葉で説明しており、投稿していたチャンネルを収益化していた。 【争点】 主な争点は、①本件解説の内容が「言語の著作物」に該当するか(著作物性)、②原告が複製を許諾していたといえるか(違法性阻却事由の有無)、③原告に発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるかの3点であった。被告は、釣具の用法や釣りの技術は定型的な内容にすぎず著作物に該当しないと主張するとともに、投稿動画の説明欄に原告の会社のチャンネルが紹介されていることから原告が複製を許諾していたことがうかがわれると反論した。さらに被告は、本件投稿によりかえって原告の知名度が向上し利益に資するため、損害が生じておらず開示の正当な理由がないとも主張した。 【判旨】 東京地裁は、原告の請求を全部認容した。まず著作物性について、本件解説は各釣具の形式的な使い方の説明にとどまらず、取り上げる事柄の選択やその説明の仕方、想定される視聴者が内容をより理解できるよう言葉の選択や順序にも工夫がされており、その表現には原告の個性が表れているとして、「言語の著作物」に該当すると判断した。次に複製の許諾については、動画説明欄は投稿者が自由に記載できるものであり、原告の承諾なく第三者のチャンネルを紹介することが可能であるから、説明欄の記載は許諾の裏付けにならないとした。正当な理由についても、本件原動画の視聴数減少による逸失利益が生じる可能性が高いこと、著作権者の許諾なく著作物が利用された場合には利用料相当額の損害が生じるのが通常であること等を指摘し、仮に知名度向上の利益があるとしてもそれが損害を上回るとはいえないとして、開示の正当な理由を認めた。