損害賠償請求・同反訴請求控訴事件、同附帯控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、YouTubeにおける動画投稿をめぐり、本訴と反訴が交差する紛争の控訴審である。一審被告(YouTuber)は、平成30年8月、自身のYouTubeチャンネルにおいて、一審原告が警察官に現行犯逮捕された状況を撮影した動画(本件逮捕動画)を「不当逮捕の瞬間!警察官の横暴、職権乱用、誤認逮捕か!」と題して投稿した。この動画は一審原告の容ぼうにモザイク処理等を施さず、逮捕場面を面白おかしく編集したもので、少なくとも210万回再生された。一審原告は、本件逮捕動画の投稿が名誉毀損、肖像権侵害及びプライバシー権侵害に当たるとして、60万円の慰謝料を求めた(本訴)。一方、一審原告も自身のYouTubeチャンネルで3本の動画(原告動画1〜3)を投稿しており、一審被告は、これらの動画が自身の著作権(複製権・公衆送信権)、著作者人格権(同一性保持権・氏名表示権)及びプライバシー権を侵害するとして、合計約438万円の損害賠償を求めた(反訴)。原審は本訴について30万円の慰謝料を認容し、反訴を棄却したところ、双方が不服を申し立てた。 【争点】 1. 本件逮捕動画の投稿による一審原告の名誉権・肖像権・プライバシー権侵害の成否及び慰謝料額 2. 原告動画1〜3の投稿による一審被告の著作権侵害の成否(著作権法32条1項の「引用」該当性) 3. 原告動画1〜3の投稿による一審被告の著作者人格権(同一性保持権・氏名表示権)侵害の成否 4. 原告動画3の投稿による一審被告のプライバシー権(郵便番号・傷病名の公開)侵害の成否 【判旨】 控訴審は、本訴請求について原審の判断を維持しつつ、慰謝料額を30万円から40万円に増額した。本件逮捕動画は、タイトルでは「不当逮捕」を標榜しているものの、その内容は一審原告が警察官に逮捕される状況を面白おかしく編集し嘲笑の対象としたものであり、撮影から約2年半後に投稿されていることからも、公益目的とは認められないと判断した。また、逮捕された事実は名誉や信用に関わる事項であり、容ぼう等の加工処理もなく公表されたことは肖像権及びプライバシー権を侵害すると認定した。慰謝料の増額にあたっては、一審被告が削除要請に応じなかったこと、210万回以上再生されたこと、謝罪や反省の意思を示さず逆に反訴を提起したこと等の事情を総合考慮した。反訴請求については、原告動画1〜3における一審被告の著作物の利用はいずれも著作権法32条1項の「引用」に該当するとして著作権侵害を否定し、著作者人格権侵害及びプライバシー権侵害もいずれも認めず、反訴請求を全部棄却した。