発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、インターネットのホームページ企画・制作等を目的とする原告(株式会社Link Life)が、氏名不詳者(本件発信者)に対する発信者情報開示を求めた事案である。本件発信者は、被告Google LLCが運営する「Google検索」上のリスティング広告において、原告が商標権を有する「BroadWiMax」の標章(商標登録第5470642号、第38類・電気通信等の役務)を無断で使用した。具体的には、「DTI【WiMax2+】最得 – BroadWiMax最得申込み」という標題の広告を表示させ、そのリンク先は原告とは無関係の通信機器貸与サービスのウェブサイトであった。原告は、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、被告に対し、当該広告を設定した広告アカウントに登録されている氏名・住所・電話番号・電子メールアドレスの開示を求めた。 【争点】 本件の争点は、①権利侵害の明白性(本件発信者が本件標章を「使用」したと認められるか)、及び②発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無の2点である。争点①について、被告は、現在では当該広告が表示されず、リンク先URLにもアクセスできないため、本件発信者による標章の使用行為を確認できないと主張した。争点②について、被告は、広告対象である「DTI WiMAX」の公式ホームページに会社概要が記載されており、本件標章を使用した者は特定されているから、発信者情報の開示を受ける正当な理由がないと主張した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を全部認容した。争点①について、証拠及び弁論の全趣旨から、本件発信者がGoogle検索上で本件標章を付した広告を公開した事実を認定し、当該行為は商標法2条2項8号にいう標章の「使用」に該当すると判断した。被告の反論については、現在において広告を確認できないというにとどまり、過去に本件投稿がされていないことを積極的に主張するものではないとして排斥した。また、違法性を阻却する事由の存在をうかがわせる事情も認められないとし、権利侵害の明白性を肯定した。争点②について、原告が本件発信者に対して損害賠償請求等を予定していることから、開示を受けるべき正当な理由を認めた。被告は広告対象のホームページに記載された会社が本件発信者であると主張したが、裁判所は、ホームページに特定の会社の商号等が記載されていても、その会社が本件投稿を行ったとは直ちにいえないことは明白であるとして、被告の主張を退けた。本判決は、リスティング広告における商標権侵害について、広告が既に削除された後であっても、証拠により過去の侵害行為が認定できる場合には発信者情報開示が認められることを示した事例である。