AI概要
【事案の概要】 被告人(当時97歳)は、令和4年11月19日午後4時46分頃、福島市内の道路を普通乗用自動車で走行中、ハンドル・ブレーキ操作を誤って自車を歩道に乗り上げさせた。そのまま歩道上を約104メートルにわたり走行し続け、前方に歩行者がいることを認識するや否や、ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込み、少なくとも時速約60キロメートルまで加速して進行した。その結果、歩道上を歩行中の被害者A(当時42歳)に自車前部を衝突させて跳ね飛ばし、Aを重症頭部外傷により即時死亡させた。さらに、信号待ちで停止していた車両2台にも衝突し、運転者・同乗者合計4名にそれぞれ加療約2週間を要する傷害を負わせた。 被告人は、いわゆる超高齢者であり、本件事故前から自宅車庫に駐車する際に自車を電柱に接触させるなどの事故を複数回起こしていた。長女やケアマネージャーからも再三にわたり運転をやめるよう注意を受けていたが、一日一回の飲食店での外食等のために運転を継続していた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被害結果の重大性について、歩行者1名の尊い生命が失われたこと、被害者には何の落ち度もなく歩道上で突如衝突されたこと、被害者の長女の目の前で事故が生じたこと、4名の負傷者がいることを指摘した。また、ブレーキとアクセルを的確に操作することは自動車運転上の最も基本的な注意義務であり、被告人の過失は重大であるとした。 他方、運転免許の返納は義務化されておらず、令和2年の認知機能検査でも問題がなかったこと、ペダル踏み間違いに判断能力・運動能力の衰えがどの程度影響したかは証拠上明らかでないこと、被告人なりに速度を落とす等の安全運転を心がけていたことから、非難の程度は死亡被害者1名の過失運転致死傷の事案の中で特に高いとまではいえないとした。 有利な情状として、対人対物無制限の任意保険に加入しており相応の賠償が見込まれること、事故直後から一貫して過失を認め反省の言葉を述べていること、今後は運転しないことを誓約していること、被告人の年齢や体調を挙げた。裁判所は、高齢者が自動車を運転せずとも不便なく生活できる社会の構築が望まれるとも付言した上で、執行猶予が可能な範囲で最も重い禁錮3年・執行猶予5年を言い渡した(求刑:禁錮3年6月)。