AI概要
【事案の概要】 本件は、地図の作成方法等を研究開発する個人発明家である原告が、Zホールディングス(旧ヤフー株式会社)及びアルプス社の地図事業を承継した被告に対し、原告が平成8年頃に作成した沖縄県糸満市周辺の地図(原告地図1)及び特許出願の願書に添付した図面(原告地図2)について、被告による「Yahoo!地図」の作成・提供並びにアルプス社による「プロアトラスSV」の作成・販売により、著作権(複製権、翻案権、公衆送信権等)及び著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)が侵害されたと主張して、不法行為又は不当利得に基づき合計1億1000万円の損害賠償等を求めた事案である。 【争点】 (1) 原告地図1に関する著作権侵害の成否(争点1-1) (2) 原告地図1に関する著作者人格権侵害の成否(争点1-2) (3) 原告地図2に関する著作権侵害の成否(争点2-1) (4) 原告地図2に関する著作者人格権侵害の成否(争点2-2) (5) 故意又は過失の有無、損害額、不当利得額、消滅時効(争点3〜6) 【判旨】 請求棄却。裁判所は、地図は地形や土地利用状況等を所定の記号で客観的に表現するものであり、個性的表現の余地が少なく、著作権法上の保護を受ける範囲が狭いのが通例であるとした上で、原告が主張する原告地図1とプロアトラスSV及びYahoo!地図との共通部分(住宅地図であること、建物ポリゴンと番地の記載方法、公共施設名称の記載方法、縮尺の圧縮、配色等)について個別に検討した。その結果、共通部分はいずれも地図の記載方法というアイデアにおいて同一性を有するにすぎないか、表現において同一性を有するとしても、原告地図1の作成当時に同様の記載方法を用いた地図が複数存在しありふれた表現であること、建物形状や番地は事実に従って記載するものであり表現の選択の幅が狭いことから、創作的表現における同一性は認められないと判断した。原告地図2についても、対応する地域のプロアトラスSVが存在せず、異なる地域の地図を比較する限りでは記載方法が共通するにとどまりアイデアにおける同一性にすぎないとした。著作者人格権侵害についても、著作権侵害が認められない以上、同一性保持権・氏名表示権の侵害も認められないとして、原告の請求をいずれも棄却した。