営業秘密使用差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、外貨両替事業を営む株式会社であり、訪日外国人向けの自動外貨両替機をオーナーに販売し、設置場所オーナーとの賃貸借契約を仲介するビジネスモデルを展開していた。原告の元取締役である被告P1、元従業員である被告P2、及び被告P1が代表取締役を務める被告会社に対し、(1)被告P2がクラウド上の顧客情報等(本件情報1)を窃取し被告会社に開示したとして不正競争防止法に基づく差止め・廃棄請求、(2)展示会で取得した見込顧客情報(本件情報2)を原告に報告せず被告会社に開示したとして同法に基づく差止め等の請求、(3)被告P2が原告の取引先に対し原告の信用を害する虚偽事実を告知したとして同法2条1項21号に基づく差止め・訂正文送付請求、(4)被告会社が原告のロゴ等の著作物を無断使用したとして著作権法に基づく差止め・削除・廃棄請求、(5)被告P1が取締役在任中に被告会社として競業取引を行ったとして会社法423条1項に基づく損害賠償請求、(6)不正競争行為に基づく損害賠償請求等、多岐にわたる請求をした事案である。 【争点】 主な争点は、(1)本件情報1及び2の営業秘密としての秘密管理性、(2)被告P2による取引先への告知が虚偽事実の告知に当たるか(不競法2条1項21号該当性)、(3)被告P1の競業避止義務違反の有無、(4)著作権侵害のおそれ及び予防の必要性の有無である。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。秘密管理性について、本件情報1及び2が記載されたファイルには営業秘密である旨の表示がなく、パスワード等のアクセス制限もなく、全従業員がアクセス可能なクラウドに他のファイルと区分されずに保存されていたにすぎず、通信・運用管理規程にも本件情報を具体的に秘密として指定する規定はなく、秘密保持契約も締結されていなかったことから、特別な費用を要さずに容易に採り得る最低限の秘密管理措置すら採られていなかったとして、営業秘密該当性を否定した。信用毀損行為については、原告の資金繰りが悪化し、設置場所オーナーへの賃料支払や両替機設置が遅滞していたことが推認される状況下で、被告P2の発言は虚偽の事実の告知とは認められないとした。競業避止義務違反については、被告会社と大善倉庫との売買契約の存在を裏付ける証拠が不十分であり、展示会での勧誘も現実の取引成立には至っていないとして否定した。著作権侵害については、被告らが訴訟当初から侵害を争わず直ちに使用を中止したことから、将来の侵害のおそれは認められないとした。