AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「電動式衝撃締め付け工具」とする特許権(特許第4362657号)を有する原告(ヨコタ工業株式会社)が、被告(アトラスコプコ株式会社)に対し、被告が製造・販売等するコードレスパルスツール(被告製品)が本件特許権を侵害すると主張して、特許法100条に基づく差止め・廃棄、及び損害賠償として11億円の支払を求めた事案である。本件特許は、従来のインナロータ型電動モータに代えてアウタロータ型電動モータを採用し、小型・軽量・低反力かつ耐久性のある電動式衝撃締め付け工具を提供する発明に関するものである。原告は、一次的に被告と被告製品の海外製造者等との共同不法行為、二次的に被告単独の不法行為を請求原因として主張した。 【争点】 主な争点は、①被告製品の構成要件充足性(「衝撃発生部」「強力なトルク」の解釈)、②本件発明に関する無効の抗弁(明確性要件違反、6件の先行技術に基づく進歩性欠如)、③訂正の再抗弁の成否、④損害額(共同不法行為・単独不法行為それぞれの算定)、⑤差止め・廃棄の必要性である。 【判旨】 裁判所は、被告製品が本件発明の技術的範囲に属すると認定した。「衝撃発生部」はベーン方式に限定されず、「強力なトルク」も締付対象物を締め付けるに足りるトルクを意味するにすぎないと解した。無効の抗弁については、明確性要件違反を否定し、乙7発明(米国特許)に基づく進歩性欠如のみを認めたが、それ以外の5件の先行技術に基づく主張はいずれも動機付けの欠如等を理由に排斥した。原告が衝撃発生部を油圧パルス発生部に限定する訂正請求を行ったところ、裁判所は訂正の再抗弁を認め、乙7発明のハンマー方式を油圧パルス発生部に置換する動機付けがなく阻害要因もあるとして、訂正後の発明には進歩性が認められ無効理由は解消したと判断した。共同不法行為の主張は、被告製品の所有権が国外で移転しており海外関連会社が日本国内で実施行為をした事実は認められないとして棄却した。損害額については、特許法102条2項に基づく被告の限界利益を基礎としつつ、競合品の存在、被告製品の多彩な性能(独自の冷却技術・コントローラ等)、本件特許が製品の一部にのみ使用されていること等から6割の推定覆滅を認めた。102条3項の重畳適用は否定し、実施料率4%で算定した3項損害額との比較により、合計4486万7903円の損害賠償、被告製品の差止め・廃棄を認容した(金型除却請求及び11億円の大部分は棄却)。