AI概要
【事案の概要】 税理士である被告人が、メンズパブの経営者やホストらと共謀の上、令和2年6月、ホスト4名分の持続化給付金合計400万円をだまし取ったとして詐欺罪で起訴された事案である。検察官の主張する詐欺の手口は、真実はホストらが給与所得者であって個人事業者に該当しないのに、個人事業者であると偽り、事業所得を計上した確定申告書の控えや架空の売上減少月を記載した売上台帳を添付して持続化給付金を申請したというものであった。被告人は、税理士法人に所属する税理士であり、個人事業者として確定申告をしていないホステスらに確定申告方法を指南し手数料を得るスキームを考案していた。ホストらの持続化給付金申請は、このスキームの一環として行われた。 【争点】 主な争点は、(1)ホストらが個人事業者に該当しないといえるか、(2)確定申告書の記載が虚偽といえるか、(3)売上台帳の記載が虚偽といえるか、(4)被告人がこれらの虚偽性を認識していたか、(5)被告人と共犯者間に詐欺の共謀があったか、であった。 【判旨】 裁判所は被告人に無罪を言い渡した。まず売上台帳について、ホスト4名の4月の売上が前年同月比で50%以上減少したとの記載は虚偽であると認定したが、被告人がこの虚偽性を認識していたかについては合理的な疑いが残るとした。売上台帳を6月3日に被告人の指示で作成したとするホストDの証言について、他の関係者の証言と整合しないこと、捜査段階から供述が変遷していること等を指摘し、信用性を否定した。また、被告人は仲介者Xを通じて両店が4月に休業していたと聞いており、当時の繁華街の状況に照らしてそう信じたことは不合理ではないとした。次にホストらの個人事業者該当性について、営業活動のための遅刻や中抜けが許容されていたこと、営業費用がホスト自己負担であったこと、社会保険に未加入であったこと等から、個人事業者と見る余地があり、被告人が個人事業者と認識していた可能性は排斥できないとした。確定申告書の記載についても、白色申告では経費を口頭聴取して計上すること自体が不当とはいえず、虚偽性の認識を認めるには疑問が残るとした。さらに本件スキーム全体を通じた被告人の認識についても、給与所得者を除外する措置を講じていたこと等から、詐欺の確定的認識も未必的認識も認められないと判断した。