遺族補償一時金不支給処分取消請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和3行コ70
- 事件名
- 遺族補償一時金不支給処分取消請求控訴事件
- 裁判所
- 名古屋高等裁判所
- 裁判年月日
- 2023年4月25日
- 裁判官
- 長谷川恭弘、寺本明広、松田敦子
- 原審裁判所
- 名古屋地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 中部電力株式会社に平成22年4月に入社し、三重支店営業部に配属された新入社員が、同年10月に自殺した事案である。新入社員の母である控訴人が、過重な業務及び上司によるパワーハラスメントにより精神障害を発病して自殺に至ったとして、労災保険法に基づく遺族補償一時金の支給を請求したところ、津労働基準監督署長が不支給処分としたため、その取消しを求めた。原審は業務起因性を否定して請求を棄却したため、控訴人が控訴した。 【争点】 主な争点は、新入社員の精神障害の発病及び自殺について業務起因性が認められるか否かである。具体的には、①技術振興センター案件及び三井住友案件の各業務が新入社員にとって過重であったか、②上司であるb課長によるパワーハラスメントの有無、③これらによる心理的負荷の程度が精神障害を発病させる程度に達していたかが争われた。被控訴人(国)は、各業務は過去の資料を参照すれば容易に遂行できるものであり、同僚のサポートも受けていたとして業務の過重性を否定し、パワーハラスメントについても直接の目撃証言がないとして争った。 【判旨】 控訴認容(原判決取消し、不支給処分取消し)。裁判所は、原審と異なり業務起因性を認めた。三井住友案件について、入社半年の新入社員にとって難易度が高い業務であり、蒸気配管図の作成や熱損失計算は前例のない手法を要するものであったこと、主担当を引き継いだ当初からスケジュールが3か月遅れでタイトであったこと、中間報告の前後で著しい心理的負荷を受けたことなどから、心理的負荷の程度は「強」に該当すると認定した。技術振興センター案件についても、経験のない新入社員にとって困難な業務であり、上司からの業務指導の範囲を超える叱責も含め「中」と認定した。パワーハラスメントについては、友人iの証言の信用性を高く評価し、b課長が「お前なんか要らん」「そんなんもできひんのに大卒なのか」等の発言をしていた事実を認定し、人格を否定する発言による心理的負荷は少なくとも「中」と評価した。これらを総合し、全体として心理的負荷は「強」に該当するとして、適応障害の発病及び自殺の業務起因性を認め、不支給処分を取り消した。