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【事案の概要】 広島大学附属三原学校園(幼小中一貫校)に在籍していた当時14歳の生徒Eが、平成28年6月18日に開催された運動会の組体操プログラムにおいて、9名で構成する3段の騎馬の2段目に配置され、退場時に騎馬を解体した後、同月20日午前3時頃に頭痛・吐き気を訴え、小脳出血により死亡した。Eの父母及び弟ら(原告ら)は、被告(国立大学法人広島大学)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、①騎馬解体時に3段目の生徒Pの膝がEの後頭部に当たる事故が発生し、教諭らに安全配慮義務違反があったとして損害賠償を求める請求(請求1)と、②Eの死亡原因の調査・報告義務違反及び遺族への誠実対応義務違反があったとして慰謝料等を求める請求(請求2)を行った。被告は、本件プログラムの実施とEの死亡との因果関係を否認し、各義務違反も争った。 【争点】 (1) 本件プログラムの際にEの頭部に外力が加わる事象が発生し、その結果Eが死亡したといえるか(争点1) (2) 被告の安全配慮義務違反の有無(争点2) (3) 被告の調査・報告義務違反及び誠実対応義務違反の有無(争点3) 【判旨】 請求棄却。争点1について、裁判所は二つの観点から検討した。第一に、騎馬解体時にPの膝がEの後頭部付近に接触した可能性は否定できないものの、映像や生徒らへの聞取り調査の結果から、強い外力が加わったとは認められないとした。Eは解体後直ちにテントに戻り、閉会式では優勝旗を持って走るなど通常の活動を行っており、死亡前日も外出や勉強をしていたことから、頭部打撃による症状が生じていたとは評価できないとした。第二に、医学的観点から、被告側医師Uの意見に基づき、小脳は厚い頭蓋骨や小脳テントに守られた構造であり、小脳出血を生じさせるには非常に大きな外力が必要であるところ、本件CT画像上、頭蓋骨骨折やテント上の外傷性病変は認められず、原告側医師Wの主張する遅発性外傷性脳内血腫の発症機序は観念的・理論的な可能性にとどまるとした。むしろ、Eの臨床経過は小児の脳動静脈奇形による小脳出血の症状と一定程度合致するとして、内因性疾患の可能性が比較的高いと判断した。争点3について、学校は原告夫婦の求めに応じて適時に合理的な調査を行い結果を報告しており、調査・報告義務違反は認められず、校園長の一部不穏当な発言についても違法性は認められないとした。