AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(内外化学製品株式会社)が、被告ら(三菱瓦斯化学株式会社、株式会社片山化学工業研究所、ナルコジャパン合同会社)が保有する特許(特許第5879596号、発明の名称「海生生物の付着防止方法およびそれに用いる付着防止剤」)について特許無効審判を請求したところ、特許庁が訂正を認めた上で「審判の請求は成り立たない」との審決(二次審決)をしたため、その取消しを求めた事案である。本件特許発明は、海水冷却水系の海水中に二酸化塩素と過酸化水素を特定の濃度範囲(二酸化塩素0.01〜0.5mg/L、過酸化水素0.1〜1.05mg/L)で共存させることにより、海生生物の付着を防止する方法に関するものである。なお、一次審決は別訴で取り消されており、差戻し後の二次審決が本件の対象である。 【争点】 主な争点は、本件特許発明1の進歩性の有無であり、具体的には、(1)甲1発明(有効塩素発生剤と過酸化水素の併用による海水動物付着抑制方法)に基づく容易想到性(取消事由1-1)、(2)甲5発明(過酸化水素剤と塩素剤の併用による海水冷却水処理方法)に基づく容易想到性(取消事由2-1)、(3)これらを前提とした本件特許発明2ないし4の進歩性の判断の誤り(取消事由1-2、2-2)である。原告は、甲1発明の有効塩素発生剤を二酸化塩素に置換する動機付けがあること(この点は一次判決の拘束力により争いなし)を前提に、甲5文献の実施例の数値を換算すれば本件数値範囲は容易に想到できると主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。取消事由1-1(甲1発明に基づく進歩性判断の誤り)について、裁判所は、有効塩素発生剤を二酸化塩素に置換する動機付けは一次判決の拘束力により認められるとしつつも、本件数値範囲の容易想到性は否定した。甲5発明は塩素剤の使用を前提としてトリハロメタン生成の課題を解決するものであり、甲1発明に二酸化塩素を置換した上で更に甲5発明を組み合わせる動機付けがあるとはいえないとした。また、甲5文献の数値を有効塩素量の換算で単純に適用することについても、甲5発明の拡散器を備えた条件下での実施例であること等を理由に否定した。甲1発明のみからの容易想到性についても、甲1文献には二酸化塩素と過酸化水素の組合せ自体が開示されておらず、実施例の数値範囲も本件数値範囲とは大きく異なるとした。さらに有利な効果についても、訂正明細書の試験例1ないし5を総合すれば、本件数値範囲全体にわたり次亜塩素酸ナトリウムとの併用と比較して優れた海生生物付着防止効果が具体的に開示されていると認定した。取消事由2-1(甲5発明に基づく進歩性判断の誤り)についても、甲5発明は塩素剤の使用を前提として課題を解決しており、二酸化塩素への置換の動機付けは認められないとして排斥した。