AI概要
【事案の概要】 本件は、ヘアードライヤー等を販売する原告(ダイソン)が、被告(パナソニック)の販売するヘアードライヤー(高浸透ナノイー搭載「ナノケア」)の広告における性能・機能に関する5つの表示(「うるおい1.9倍」「水分発生量従来の18倍」「ヘアカラーの色落ちを抑えます」「傷みがなく美しい毛先」「摩擦ダメージを抑制」)が、被告商品の品質について誤認させる表示であり、不正競争防止法2条1項20号の不正競争に該当するとして、同法3条に基づき、当該表示行為の差止め及び抹消を求めた事案である。原告は、独自に5つの検証実験(原告実験1〜5)を実施し、被告の広告表示が実際の性能と乖離していると主張した。 【争点】 被告の5つの広告表示がそれぞれ不正競争防止法2条1項20号の品質誤認表示に該当するか否かが争点となった。具体的には、①被告表示1(うるおい1.9倍)の品質誤認表示該当性、②被告表示2(水分発生量18倍)の品質誤認表示該当性、③被告表示3(ヘアカラーの色落ち抑制)の品質誤認表示該当性、④被告表示4(枝毛抑制・美しい毛先)の品質誤認表示該当性、⑤被告表示5(摩擦ダメージ抑制)の品質誤認表示該当性である。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。被告表示2について、原告実験2はシリカゲルを用いた閉鎖系での水分量測定であるが、閉鎖系の構成が不明確であり、イオン口から放出される水分がラップフィルム等に吸着されずにシリカゲルに到達するか、系外への流出・流入が防止されているかが不明であるとし、測定の正確性に疑義があると判断した。被告表示1について、原告実験1のうちFT-NIR法による実験は処理前後の水分量測定として適切であるが、原告自身がFT-NIR法を半定量的と位置づけ、KF法では同一毛髪の処理前後でなく別の毛髪を用いて測定しており、検証実験として不適切であるとした。被告表示3〜5について、原告実験3〜5はいずれも比較対象として風量等の異なるEH-ND2Bを使用しており、高浸透ナノイー機能の有無のみの比較となっておらず、比較対象の選定が不適切であると判断した。また、品質誤認表示の立証において、広告表示の解釈は一般消費者の視点に基づくとしても、そのデータは客観的かつ科学的に実証されたものであることを要するとの判断基準を示した。さらに、被告がデータを開示しないことについても、具体的態様の明示義務違反には当たらないとした。