AI概要
【事案の概要】 スイスで創業し、世界的にかばん製品等を販売する原告(ヴェンガー社)が、中国のかばんメーカーの日本法人である被告(TRAVELPLUS INTERNATIONAL株式会社)に対し、商標権侵害に基づく損害賠償を求めた事案である。原告は、略正方形の中に幅広の十字を配した登録商標(本件商標)を有していたところ、被告が「SWISSWIN」ブランドとして販売するバックパック等のかばん製品に、本件商標に類似する標章(被告各標章)を付して輸入・販売していた。先行する差止訴訟では、原告の請求を認容する判決が既に確定していた。原告は、商標法38条3項に基づく実施料相当額の損害として1億円の一部請求を行った。 【争点】 主な争点は、①本件商標と被告各標章の類否、②本件商標がスイス国旗に類似し商標法4条1項1号に該当するか、③本件商標権の効力が被告各標章に及ぶか(商標法26条1項各号の抗弁)、④被告の過失の有無、⑤損害額等であった。被告は、被告各標章は「SWISSWIN」の文字と一体の結合商標であり本件商標とは非類似であると主張したほか、本件商標がスイス国旗と類似するため無効事由があるなどと争った。 【判旨】 裁判所は、本件商標と被告各標章はいずれも類似すると判断した。両者は、略正方形の外縁部分と内部の幅広の十字という図形の中心的かつ全体的構成において共通し、縁の丸みや十字の幅、色彩等の相違点は微差にすぎず、出所の誤認混同を生ずるおそれがあるとした。被告各標章と「SWISSWIN」が結合商標であるとの被告の主張は、両者が独立して使用されている別個の標章であることを理由に退けた。スイス国旗との類似についても、本件商標は地色が黒色であり国旗の赤地とは異なること等から、商標法4条1項1号には該当しないとした。損害額の算定については、被告が品番ごとの売上集計資料を提出しなかったため、損益計算書の売上高に納品書等から算定した侵害品の割合を乗じる方法で侵害品の売上高を約3億1369万円と認定し、使用料率は業界平均や侵害プレミアムを考慮して4%と認定した。その結果、商標法38条3項に基づく損害額約1254万円に弁護士費用約125万円を加えた合計1380万2425円の限度で原告の請求を認容した。