特許権侵害差止請求権及び損害賠償請求権不存在確認請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和4ネ10093
- 事件名
- 特許権侵害差止請求権及び損害賠償請求権不存在確認請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2023年5月10日
- 裁判官
- 大鷹一郎、遠山敦士、大鷹一郎
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、後発医薬品(ジェネリック医薬品)メーカーである控訴人(ニプロ)が、エリブリンメシル酸塩を有効成分とする抗悪性腫瘍剤(乳がん治療薬)の後発医薬品について製造販売承認申請を行ったところ、先発医薬品メーカーである被控訴人エーザイ及びその子会社で特許権者である被控訴人エーザイR&Dに対し、主位的に特許権に基づく差止請求権及び損害賠償請求権が存在しないことの確認を、予備的に薬価基準収載後の同請求権の不存在確認及び後発医薬品が特許発明の技術的範囲に属しないことの確認を求めた事案の控訴審である。原審は、いずれの訴えについても確認の利益を欠くとして却下していた。本件の背景には、いわゆるパテントリンケージ(後発医薬品の承認審査において先発医薬品に係る特許権の存在を考慮する制度)の問題がある。厚生労働省の二課長通知に基づく運用では、用途特許等が形式的に存在する場合、後発医薬品の承認がなされないため、控訴人は特許権の技術的範囲の属否について裁判所の判断を得る必要があると主張していた。 【争点】 主な争点は、(1)被控訴人エーザイR&Dに対する現在の差止請求権の不存在確認請求に訴えの利益があるか、(2)被控訴人らに対する現在の損害賠償請求権の不存在確認請求に訴えの利益があるか、(3)将来の差止請求権・損害賠償請求権の不存在確認請求に訴えの利益があるか、(4)後発医薬品が特許発明の技術的範囲に属しないことの確認請求に訴えの利益があるか、である。控訴人は、パテントリンケージの発動自体が法的紛争の存在を意味すること、TPP11協定第18・53条の趣旨からも確認の利益を認めるべきこと等を主張した。 【判旨】 知財高裁は控訴を棄却した。まず、控訴人が主張する「原告医薬品が厚生労働省から承認されない」という危険・不安は、控訴人と厚生労働大臣(国)との間の公法上の紛争であり、控訴人と被控訴人らとの私人間の法律上の紛争ではないと判断した。被控訴人らは控訴人に対して何ら権利主張をしておらず、当事者間に現実の紛争は存在しないとした。また、かかる公法上の紛争については、不作為の違法確認の訴えや厚生労働大臣に対する不服申立て等の法的手段によって救済を求めるべきであるとした。TPP11協定についても、同協定第18・53条2項は、本件のような確認訴訟において裁判所が確認の利益を認めて実体的判断を示さなければならない旨を規定するものではないとして、控訴人の主張をいずれも排斥した。