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【事案の概要】 生活保護法による保護を受けていた原告が、α市福祉事務所長から、同事務所に来訪して生活状況等を明らかにすることを求める書面による指導指示(同法27条)に従わなかったこと等を理由に、保護を廃止する旨の決定(同法62条3項。以下「本件廃止処分」という。)を受けた。原告は、夫Aが現住建造物等放火の罪で収監され、共犯者Eやその関係者である暴力団関係者から危害を加えられるおそれがあるため神戸市からα市に転居し、平成30年10月に保護の開始決定を受けた。原告は高血圧、糖尿病、腰痛症等の持病を有し、医師から軽労働は可能とされていたが、就職先を体調不良で退職した後、ケースワーカーBからの電話連絡や家庭訪問に対し約1か月間応答しない状況が2度続いた。α市福祉事務所長は平成31年2月22日に書面による指導指示を行ったが、原告は来所期限の同月26日までに来所せず、その後の弁明手続でも十分な説明をしなかったため、保護の停止を経ることなく同年3月13日に保護が廃止された。なお、大阪府知事は令和3年3月に審査請求を認容し、本件廃止処分を取り消す裁決をしている。本件は、原告が本件廃止処分は違法であると主張して、被告(α市)に対し国家賠償法1条1項に基づき慰謝料等5万5000円の支払を求めた事案である。 【争点】 ①本件指導指示が生活保護法27条1項・2項に違反し違法無効であるか、②本件廃止処分に手続上の違法(再度の書面による指導指示を経ていないこと)があるか、③本件廃止処分が比例原則に反するか、④理由の提示が不十分であるか、⑤損害の発生及びその額。 【判旨】 裁判所は、本件指導指示自体は適法であると判断した。原告と約1か月間連絡が取れない状況が2度続き、求職活動状況申告書の提出もなく生活状況が不明であったことから、来所して生活状況を明らかにすることを求めた指導指示の内容は、保護の目的達成のために必要かつ最少限度の範囲内であり、客観的に実現不可能又は著しく困難でもなかったとした。口頭指導との連続性を欠くとの主張についても、原告と連絡が取れない状況では口頭による指導指示は事実上不可能であったとして退けた。 しかし、保護の停止を経ずに直ちに廃止を選択した点については、比例原則に違反すると判断した。原告は本件指導指示違反後に手紙や弁明手続で不十分ながらも生活状況の一部を明らかにしており、保護の停止や変更がされれば指導指示を履行する可能性は一定程度存在していたこと、保護費の不正受給が強く疑われる事情もなく直ちに廃止する必要性・緊急性は低かったこと、保護廃止により原告の生活が困窮することが推認されること等を総合考慮し、「保護の停止を行うことによっては当該指導指示に従わせることが著しく困難であると認められるとき」に当たるとはいえないとして、処分の選択に裁量権の逸脱・濫用があり、国家賠償法1条1項の適用上違法であると認めた。慰謝料5万円、弁護士費用5000円の合計5万5000円の損害を認容した。