AI概要
【事案の概要】 国際オリンピック委員会(IOC)は、平成29年に「五輪」の標準文字からなる商標について、第41類(セミナーの企画・運営、スポーツの興行の企画・運営等)を含む多数の指定商品・役務を対象として商標登録出願を行い、平成31年に商標権の設定登録を受けた。これに対し、原告らが、第41類の全指定役務についての商標登録は、商標法3条1項柱書き、同項2号、4条1項6号、7号及び10号に違反するとして商標登録無効審判を請求したところ、特許庁は「審判の請求は成り立たない」との審決をした。原告らは同審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に提訴した。「五輪」の語は、1936年に読売新聞の記者がオリンピック競技大会の日本語の呼び名として創作したものであり、その後広く普及して俗称として定着した経緯がある。原告らは、IOCが80年以上にわたり「五輪」を商標として使用していないこと、「五輪」は公有の状態にあり特定の者に独占させるべきでないこと等を主張した。 【争点】 (1) 手続違背の有無(IOCの被請求人適格及び審判手続の適正性) (2) 商標法3条1項柱書きの要件具備の有無(使用意思の有無) (3) 商標法3条1項2号該当性(慣用商標か否か) (4) 商標法4条1項6号に関する判断の当否(非営利公益事業の該当性と同条2項の適用) (5) 商標法4条1項7号該当性(公序良俗違反の有無) (6) 商標法4条1項10号該当性(株式会社Olympicグループの引用商標の周知性) 【判旨】 裁判所は、原告らの請求を棄却した。まず手続違背について、IOCはスイス法に基づく法人であるが、日本及びスイスはいずれもパリ条約の同盟国であり、同条約2条1項の内国民待遇の規定が商標法77条3項で準用する特許法25条3号の「条約に別段の定があるとき」に該当するから、IOCは商標権を享有できるとした。審判手続についても、審判合議体には審理終結時期についての裁量権があるとして手続違背を否定した。商標法3条1項柱書きについては、IOCがオリンピック競技大会の主催者であり、便乗商法防止のために「五輪」を商標管理する意思を有していたと認定し、使用意思を肯定した。同項2号については、「五輪」はオリンピック競技大会の俗称として著名であり、被告の役務の出所識別標識としての機能を有するから、慣用商標には当たらないとした。4条1項6号については、原告らの主張は本件商標が同号に該当しないという主張に帰するため、同号不適用とした審決の結論に影響しないとした。4条1項7号については、「五輪」が公有の状態にあることを認める証拠はなく、IOCによる違法ライセンス活動の事実も認められないとして公序良俗違反を否定した。4条1項10号についても、引用商標が本件請求役務との関係で需要者に広く認識されている証拠はないとして該当性を否定した。