特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「コメント配信システム」に関する特許権(特許第6526304号)を有する控訴人(株式会社ドワンゴ)が、米国法人である被控訴人FC2が運営するコメント付き動画配信サービス「FC2動画」等のシステムが本件特許の技術的範囲に属するとして、被控訴人FC2及び被控訴人ホームページシステム(HPS)に対し、特許法100条に基づく差止め等及び損害賠償を求めた事案の控訴審である。本件特許は、動画上にコメントをオーバーレイ表示する際、複数のコメントが互いに重ならないよう表示位置を制御するコメント配信システムに関するものである。原審(東京地裁)は、被告各システムは本件特許の技術的範囲に属するとしつつも、属地主義の原則により、サーバが全て米国に存在する以上、日本国内での「生産」(特許法2条3項1号)には該当しないとして、請求を全部棄却していた。控訴人は控訴するとともに、当審で損害賠償請求を10億円に拡張した。 【争点】 主要な争点は、サーバが米国に存在しユーザ端末が日本国内に存在するネットワーク型システムの構築が、特許法2条3項1号の「生産」に該当するか否か(属地主義の原則との関係)であった。加えて、生産主体の帰属、14種の無効理由の成否、権利濫用の成否、差止め・除却の必要性及び損害額が争われた。 【判旨】 知財高裁大合議部は、原判決を一部変更し、被控訴人FC2に対する差止め及び損害賠償請求を一部認容した。まず、ネットワーク型システムの発明における「生産」とは、単独では構成要件を充足しない複数の要素がネットワークを介して接続され、全体として構成要件を充足する機能を有するようになることで、システムを新たに作り出す行為をいうと解した。その上で、属地主義の原則を厳格に解釈してサーバの所在のみで実施該当性を否定することは、サーバを国外に設置するだけで特許を容易に回避できることとなり妥当でないとし、行為の具体的態様、国内に存在する要素が果たす機能・役割、発明の効果が得られる場所、特許権者の経済的利益への影響等を総合考慮して判断すべきとの規範を示した。本件では、国内のユーザ端末がコメントの重複判定・表示位置制御という発明の主要機能を担い、発明の効果が国内で発現していること等から、「生産」に該当すると認定した。生産主体については、サーバの設置・管理やプログラムのアップロードを行い、ファイル受信がユーザの別途の操作なく自動的に行われる仕組みを構築した被控訴人FC2が主体であると判断した。無効の抗弁及び権利濫用の主張はいずれも排斥された。損害額については、特許法102条2項に基づく推定を適用しつつ、コメント表示機能の寄与が限定的であるとして推定を覆滅し、最終的に1101万5517円の損害賠償及び被告サービス1における差止めを認容した。被控訴人HPSについては侵害を認めず、プログラム抹消・サーバ除却請求も棄却された。